GnRH,FSH製剤投与により誘起した卵胞発育波での過剰排卵誘起(Wavesynch-SOV)による採胚成績の改善


[要約]
発情後6日(Day 0)に低容量GnRHを投与後、FSH単回投与(0.5日)で卵胞発育波刺激後に、過剰排卵(2.5日開始)を行うことで従来のWaveSynchによる過剰排卵法より良好な採胚成績が得られる。

[キーワード]GnRH、過剰排卵、卵胞発育波、酢酸フェルチレリン、胚生産、ウシ

[担当]新潟農総研・畜産研究センター・繁殖工学科
[連絡先]電話0256-46-3103
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 過剰排卵誘起処置 (SOV) のホルモン剤に対する反応性は、個体差が大きく安定しない。近年、発情周期中に2〜3回の卵胞発育が繰り返される卵胞発育波(FW)の存在が明らかとなり、SOV開始時に存在する主席卵胞(DF)が他の卵胞の発育に影響を及ぼし、採胚成績を左右することが知られている。我々は発情後6日目にGnRH製剤25 μg投与、その後2.5日目よりSOV(Wavesynch-SOV)を開始することで採胚成績が向上することを示したが、FW誘起を目的としたGnRHに、さらにFSHを加えた過剰排卵スケジュールを検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 過剰排卵スケジュールを図1に示す。発情後6日目(Day 0)にGnRH製剤(酢酸フェルチレリン)25μg、その0.5日後にFSHをホルスタイン種経産牛に投与すると、GnRH処置に比べGnRH処置1.5日目の小型(4〜7mm)卵胞数が上昇するが、大型(10 mm以上)卵胞数には違いが見られない(図2)。
2. SOV開始に伴い卵胞の発育が観察され、人工授精(AI)12時間前には多数の発育した卵胞が確認され、AI後24時間目には大部分の卵胞が排卵する(図2)。
3. 採胚成績は表1に示すとおり、GnRH+FSH処置でAランク胚数が上昇する。
4. 以上の結果から発情後6日目に25μgのGnRH、その0.5日後にFSHを投与し、GnRH投与後2.5日からSOVを開始するWavesynch-SOVにより胚生産がさらに向上する。

[成果の活用面・留意点]
1. 25μgのGnRHは少量であるため、ツベルクリン用の注射筒と21G針を用い確実に投与する。
2. 全く過剰排卵処置に反応しない牛あるいは正常胚が全く回収できない牛に対して、100%効果を期待できるものではなく、そのような牛に対する効果的な方法の検討も必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新たなホルモン調節手法を用いた過剰排卵処置法の効率化
予算区分:県単
研究期間:2000?2002年度
研究担当者:佐藤太郎、中田健(酪農学園大学)、内山保彦、佐藤義政、梅田雅夫
発表論文等:
佐藤 (2001) 北海道牛受精卵移植研究会会報 20: 30-31
佐藤ら、(2002) J. Repro. Dev. Suppl. 47: a32
Sato et al. (2002) XXII World Buiatrics Congress.
佐藤ら、(2003) J. Repro. Dev. Suppl. 47: j95

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