サトウキビ抽出物を利用した伊勢赤どりの抗菌性物質無添加飼料給与技術


[要約]
伊勢赤どりにサトウキビ抽出物を20%含有する市販資材を0.05%添加した飼料を給与することにより、細胞性免疫の増強効果と鶏腸管内サルモネラ増殖抑制効果が認められる。

[キーワード]サトウキビ、肉用鶏、抗菌性物質、無添加飼料、細胞性免疫、サルモネラ

[担当]三重科技セ・畜産研究部・中小家畜グループ
[連絡先]電話0598-42-2207
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 畜産物の安全性に対する消費者の関心が高まっている状況のなか、抗菌性物質無添加飼料給与による鶏肉生産が流通業界から生産現場に対して要望されているが、飼養管理技術が未確立なため、育成率の低下や食鳥処理場での廃棄率の増加等が懸念されている。一方、有用微生物を含有した微生物資材が家畜の生産性向上等を目的に販売されており、抗菌性物質に替わるものとして期待されている。そこで、抗菌性物質に頼らない肉用鶏飼養管理技術を開発するため、サトウキビ抽出物の飼料添加による肉用鶏の免疫増強効果、生産性及びサルモネラ増殖抑制効果について検討を行う。

[成果の内容・特徴]
 試験1:サトウキビ抽出物を20%含有する市販資材を0.05%、0.25%、1%添加した飼料、抗菌性物質含有飼料及び無添加飼料給与による三重県特産肉用鶏「伊勢赤どり」に対する免疫増強効果及び生産性を検討する。
 試験2:同様に0.05%添加、1%添加及び無添加飼料給与による鶏腸管内のSalmonella Enteritidis(SE)増殖抑制効果を検討する。
1. ヒトγグロブリンを7週齢時に筋肉内注射し、9週齢時に肉垂に接種し、腫脹差を測定したところ、24時間後において0.05%区が抗菌剤区を除く他の区に比べて大きく、サトウキビ抽出物による細胞性免疫効果が認められる(図1、試験1)。
2. 異種抗原(羊赤血球及びBrucella abortus不活化)接種による凝集抗体価は、各区間に差はなく、サトウキビ抽出物による液性免疫効果は認められない(試験1)。
3. 生産性は各区間に差はなく、サトウキビ抽出物添加による悪影響は認められない(試験1)。
4. SEを3日齢時に経口接種後1〜7日の排出盲腸便からのSE検出率、盲腸内容物中のSE検出率及びSE数は0.05%区が最も少なく、鶏腸管内SE増殖抑制効果が認められる(図234、試験2)。
 以上のことから、サトウキビ抽出物を20%含有する市販資材を0.05%添加した飼料の給与により、細胞性免疫の増強効果と鶏腸管内サルモネラ増殖抑制効果が認められたことから、抗菌性物質に頼らない肉用鶏の飼養管理技術として活用できる可能性がある。

[成果の活用面・留意点]
1. 抗菌性物質無添加飼料給与飼育をさらに効果的に行うためには、一般衛生管理による病原体の除去・侵入防止、並びに適正な飼養管理によるストレスの低減を図る必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:無投薬飼育管理による地域特産鶏肉の生産技術の確立
予算区分:国補
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:巽俊彰、佐々木健二、森昌昭、紀平三生、岡秀和、寺田和彦、中西圭一

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