魚油を利用したEPA、DHA含量の高い豚肉の生産


[要約]
肥育後期飼料に魚油を添加給与することにより、背脂肪内層の脂肪酸組成はEPA、DHAの割合が増加する。また、魚油を飼料に配合する方法として、飼料タンク詰め込み時に添加することにより均一に配合できる。

[キーワード]ブタ、脂肪酸組成、EPA、DHA

[担当]福井畜試・家畜研究部・中小家畜研究グループ
[連絡先]電話0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 消費者の健康志向にともない、アレルギー症状の軽減や生活習慣病の予防効果がある可能性が示されているn−3系列脂肪酸の多い機能性豚肉の生産が試みられている。鯖由来の魚油は脂肪酸の約2割がEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)でありn−3系列脂肪酸資源として有望であるが、酸化されやすく液状であるため、飼料として利用されていない。そこで、魚油への抗酸化剤の添加効果を検討するとともに肥育豚に魚油添加飼料を給与し脂肪酸組成について検討する。また、飼料への簡易な配合方法として、飼料タンク詰め込み時の配合の有効性についても検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 試験1:魚油2.5%添加の魚油区および無添加の対照区を設定し、1区LW種4頭(雌2頭、去勢2頭)を用い、出荷前5週間給与した。試験2:魚油2.5%添加の魚油区および無添加の対照区を設定し1区LW種4頭(雌4頭)を用い、出荷前6週間給与した。また、魚油の配合は飼料運搬車から飼料タンク詰め込み時に行った。試験に供した魚油には抗酸化剤(エトキシキン)を0.015%添加した。
2. 魚油に抗酸化剤を添加することにより、常温暗所で放置30日後の過酸化物価(meq/kg)は、無添加の197に対して添加すると45と約1/4に低下した(表1)。
3. 試験2において、試験飼料の粗脂肪の平均値は対照区の6.06に対し、魚油区では8.12であった。また変動係数は対照区の4.0に対し、魚油区では3.2であった(表2)。
4. 皮下脂肪内層の脂肪酸組成のEPA、DHAの割合は試験1・試験2ともに対照区に比べ魚油区が有意に高くなり、また、胸最長筋の脂肪酸組成のEPA、DHAの割合も試験1では対照区に比べ魚油区が有意に高くなった(表3)。
5. 発育成績・肉質成績はともに、対照区と変わらず良好であった(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 魚油に抗酸化剤を添加することで過酸化脂質の発生が抑えられ、保存性が良くなる。
2. 魚油の配合に飼料運搬車を利用することで、各農家での配合作業が省力化し配合機器が不要になる。
3. 魚油の給与による豚肉の保存性(脂質酸化等)について、検討が必要である。
4. エトキシキンが使用禁止になる可能性があるので、新たな抗酸化剤の検索を進める必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:機能性畜産物の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:久保長政、水口智越

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