屑米、エゴマ等給与によるα−リノレン酸割合の高い鶏卵生産技術


[要約]
屑米、屑大麦主体の飼料を採卵鶏に給与することにより、卵黄中のn-6系列脂肪酸であるリノール酸の割合が減少し、さらにエゴマ種子の添加によりn-3系列の脂肪酸であるα-リノレン酸の割合が10倍以上に増加し、n-6/n-3比は2以下に低下する。

[キーワード]卵用鶏、n-6/n-3、脂肪酸組成、コメ、エゴマ

[担当]福井畜試・家畜研究部・中小家畜研究グループ
[連絡先]電話0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 食品中リノール酸等のn-6系列脂肪酸とα‐リノレン酸等のn-3系列脂肪酸との比率 を低くすることにより、アレルギー症状の軽減や生活習慣病の予防効果があるという可能性が示されており、これらの脂肪酸組成を改善した畜産物の生産が行われている。そこで、α‐リノレン酸含量の高いエゴマ種子と地域の飼料資源として活用が望まれている屑米、屑大麦を組み合わせた飼料を採卵鶏に長期間給与し、機能性食品として付加価値のある鶏卵の生産技術について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 試験区は対照区(トウモロコシ72.8%+基礎飼料27.2%)、屑米区(屑玄米72.8%+基礎飼料27.2%)、屑大麦区(屑大麦72.8%+基礎飼料27.2%)、屑米・エゴマ区(屑玄米72.8%+基礎飼料27.2%+エゴマ2.5%)、屑大麦・エゴマ区(屑大麦72.8%+基礎飼料27.2%+エゴマ2.5%)の5区とし、コマーシャル鶏(各区26羽×2反復)を用い、22週齢から92週齢まで70週間飼養した。各区の供試飼料は、単味飼料を自家配合(重量比)し、CP15.5%以上、ME2,800kcal/kg以上になるよう調整した。
2. 各区で給与した主体飼料中の脂肪酸組成を表1に示した。トウモロコシではリノール酸の割合が58.1%であったのに対し、屑米では45.1%と低い値であった。α−リノレン酸はトウモロコシと屑米には含まれず、屑大麦には5.0%と若干含まれ、エゴマは64.0%と高い値を示した。
3. トウモロコシを屑米や屑大麦で代替させることにより、卵黄中のリノール酸の割合は低下した。さらにエゴマ種子を添加することにより、α‐リノレン酸の割合は対照区の0.2%から、屑米・エゴマ区では2.5%、大麦・エゴマ区では3.7%と10倍以上に増加し、n-6/n-3比は対照区の5.1からそれぞれ1.5に低下した(表2)。また、n-6/n-3比は試験開始後4週目の26週齢から終了時の92週齢まで、ほぼ一定に推移した。
4. 屑米や屑大麦の給与は、産卵率、ハウユニットなどに影響を及ぼさなかったが、卵黄色の数値を有意(P<0.01)に低下させた(表3表4)。なお、卵質検査の測定には、富士平工業社製の卵質検査器械とロッシュ社製のカラーファンを用いた。

[成果の活用面・留意点]
1. 小規模農家を対象に、地域の飼料資源の屑大麦やエゴマ種子を利用した特色のある鶏卵を生産する場合の技術資料として活用できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:機能性畜産物の開発
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:藤井麻衣、山崎俊雄、山口良二

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