北陸地域向け飼料イネのβ-カロテンおよびα-トコフェロール含量


[要約]
早生および中生品種・系統飼料イネ生草の黄熟期β-カロテン含量は稲ワラの約2〜3倍で、α-トコフェロール含量は同比約11〜19倍と高く、サイレージ貯蔵による両含量の減少は少ない。

[キーワード]α-トコフェロール、サイレージ、飼料イネ、肉用牛、β-カロテン

[担当]富山畜試・飼料環境課
[連絡先]電話076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 水田に特化し、大家畜飼養農家が点在する北陸においては、飼料イネ生産を推進するなかで、肉質向上を目指した肉用肥育牛への利用拡大が望まれている。肥育牛への飼料イネ給与については、一般に利用される稲ワラと比べて、β-カロテン含量の高いことが懸念されている一方、最近は、肉色保持に効果が高いα-トコフェロール含量が注目されてきている。しかし、北陸地域向け飼料イネにおいて、β-カロテンおよびα-トコフェロール含量の熟期等との関係については不明な点が多い。そこで、北陸地域で求められている早生および中生の飼料イネのβ-カロテン含量とα-トコフェロール含量について、収穫作業時期として望まれる8月下旬の含量や熟期および実験室規模でのサイレージ貯蔵後の変化を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 飼料イネ6種の生草のβ-カロテン含量は、乳熟期から黄熟期にかけて約1/3まで急激に減少し、完熟期で約1/10に減少する。一方、α-トコフェロール含量は熟期による減少が緩やかで、完熟期でも乳熟期の1/2以上である(図1)。
2. 生草を予乾なしでサイレージ貯蔵した後のβ-カロテン含量は、貯蔵前に比べ乳熟期では約1/2以下まで減少するが、黄熟期では減少しないため、貯蔵前に認められる熟期間の差が貯蔵後では小さい。同様に、α-トコフェロール含量も乳熟期は貯蔵前の約1/2以下まで減少するが、黄熟期では「北陸184号」と「どんとこい」を除いて減少せず、乳熟期の貯蔵後含量より高い(図1)。
3. 生草を予乾なしでサイレージ貯蔵した後のβ-カロテン含量は、貯蔵前に比べ乳熟期では約1/2以下まで減少するが、黄熟期では減少しないため、貯蔵前に認められる熟期間の差が貯蔵後では小さい。同様に、α-トコフェロール含量も乳熟期は貯蔵前の約1/2以下まで減少するが、黄熟期では「北陸184号」と「どんとこい」を除いて減少せず、乳熟期の貯蔵後含量より高い(表1)。
4. 8月下旬における乳熟期〜完熟期のイネ12品種生草のβ-カロテン含量は、8〜80mg/kg・DMと稲ワラに比べ約1〜8.6倍あり、α-トコフェロール含量は120〜414mg/kg・DMと同比6.5〜22倍である(表2)。
5. 以上のことから、早生および中生品種・系統飼料イネ生草のβ-カロテン含量は、黄熟期に16〜26mg/kg・DMあり、稲ワラの約2〜3倍でサイレージ貯蔵による減少は少ない。また、同熟期のα-トコフェロール含量は200〜352mg/kg・DMと稲ワラの約11〜19倍と高く、サイレージ貯蔵による減少は品種による差はあるものの少ない。

[成果の活用面・留意点]
1. 肉用肥育牛に適した低カロテン品種とその刈り取り時期の決定に活用できる。
2. 低カロテン品種の付加価値として、α-トコフェロール含量の高い品種を選ぶための参考となる。
3. サイレージ貯蔵を行う場合は熟期により両含量の推移が異なることと、品種により推移の度合いが異なることに留意する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新鮮でおいしい「ブランド・ニッポン」農産物提供のための総合研究
      肉用肥育牛に対応した飼料イネ調製・給与技術の開発
予算区分:ブランドニッポン3系(委託)
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:小山智鶴、金谷千津子、吉野英治、丸山富美子

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