トマト茎葉と鶏ふんの混合堆肥化による萎凋病菌の殺菌効果と堆肥利用


[要約]
トマト茎葉残さを切断し、鶏ふんで被覆して堆肥化すると発酵温度は60℃以上を1ヶ月以上継続し、トマト萎凋病菌はほとんど死滅する。できた混合物堆肥は肥料成分にも富み、トマト栽培で循環利用可能な堆肥になる。

[キーワード]トマト茎葉残さ、トマト萎凋病、鶏ふん、混合堆肥、

[担当]千葉畜総研・生産環境部・資源循環研究室
[連絡先]電話043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 家畜排せつ物法が制定され良質堆肥の供給量が増えており、耕種農家における家畜ふん堆肥の利用促進が求められている。一方で農場における収穫残さである茎葉根、規格外品などの農場有機性残さの適正処理が求められている。そこで耕種農家における家畜ふん堆肥の一層の利用促進を図るため、ハウストマト栽培で発生する茎葉残さを鶏ふんで包み込むように被覆して堆肥化発酵を促進し、トマト茎葉残さ中のトマト萎凋病菌を死滅させるとともに、できた混合物堆肥を肥料としてハウストマト栽培で循環利用する可能性について検討した。

[成果の内容・特徴]
1. トマト茎葉残さを2cm位に切断して発酵鶏ふん(縦型密閉堆肥化施設で処理)またはモミガラ鶏ふん(生鶏ふんとモミガラを等容量混合)と混合堆積すると堆肥化に十分な温度を保つことができる (図表略)。しかし、トマト萎凋病に罹患した茎葉(堆肥中に埋込み)には、トマト萎凋病菌が発酵鶏ふんカット区以外で残存した(表1)。
2. 萎凋病茎葉のトマト萎凋病菌を殺菌する堆肥化方法を検討した(表2)。
2.5cm程度に切断したトマト茎葉残さ(400kg)を乾燥鶏ふん(148kg)またはその2倍量(296kg)、およびモミガラで被覆保温した形で堆肥化処理を行うと中心部(床上30cm)の温度は65〜70℃に達し、60℃以上を1ヶ月継続した(図1)。また、地面近くでも50〜60℃に達した(図2)。
トマト茎葉残さのみの処理区でも中心部の温度は60℃を超えたが低下が早く、また床面温度は30℃程度と低かった(図1図2)。
3. トマト茎葉残さを鶏ふんで包み込んで堆肥化すると、トマト萎凋病菌は死滅したが鶏ふんを用いない7区や8区では残存率が高かった(表3)。
4. 堆肥化104日目の肥料成分は、鶏ふん適量区(1、2区)ではN:1.0%、P2O5:1.9%、K2O:0.8%、CaO:4.8%、C/N:14程度、鶏ふん2倍区(3〜6区)ではN:1.3%、P2O5:3.0%、K2O:1.0%、CaO:7〜11%、C/N:13程度であった。

[成果の活用面・留意点]
1. トマト茎葉残さを鶏ふんで被覆し堆肥化すると、トマト萎凋病菌が死滅しトマト栽培に堆肥として循環利用できる。
2. 圃場に残置される根などは別途土壌消毒が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:鶏ふんと農場有機性残さとの混合物の肥料化の検討
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:石崎重信、鈴木和美、岡崎好子
発表論文等:1)鈴木ら(2002)千葉畜セ研報No.2:41-42. 2)石崎・岡崎(2004)千葉畜セ研報No.4:29-35

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