腐植酸資材の添加による堆肥のpH調整とアンモニアガスの揮散抑制


[要約]
堆肥化過程でpHが上昇し激しくアンモニアガスが発生した堆肥に腐植酸資材を添加してpHを下げると、堆肥発酵を維持しつつアンモニアガスの発生抑制が可能。

[キーワード]家畜ふん尿、腐植酸資材、pH、アンモニアガス、アルカリ緩衝能

[担当]静岡畜試・ゼロエミッション堆肥プロジェクト
[連絡先]電話0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 家畜ふん尿等を堆肥化する場合に発生するアンモニアガスは、pHが8.5以上になると堆肥中のアンモニウムイオンが急激にガス化することが知られている。
 そこで、牛ふんにおからを等量混合し、一次発酵を終了してもpHが高くアンモニアガスが高濃度で発生する堆肥に、アルカリ緩衝能が高い腐植酸資材(亜炭を硫酸で処理したもの)を添加することによってpHを8.5以下に調整し、二次発酵におけるアンモニアガスの発生を抑制して悪臭を防止する。

[成果の内容・特徴]
1. 堆肥のpHを目標値にするために必要な腐植酸資材の量は、土壌の中和石灰量を求める場合と同じように、pH緩衝曲線を作成して添加量を決定することが可能(図1)。
pH緩衝曲線の作成法は、堆肥20gに腐植酸資材を段階的に添加し、乾物重量の5倍量の水を加えて30分振とうしてから上澄み液のpHをガラス電極法で測定する。
2. 牛ふん・おから堆肥20gに腐植酸資材2gを添加してpHを8.3に調整し、55℃のインキュベーター内で好気的に培養すると、腐植酸資材を添加した堆肥のpHは3週間以上pH8.5以下に維持される(図2)。
3. 牛ふん・おから堆肥4kgに腐植酸資材400gを添加してpHを8.3に調整し、小型堆肥化実験装置(容量14L)で堆積すると、排気中のアンモニアガス濃度は10mg/m3以下となり、pH調整しない場合の1/5〜1/10となる(図3)。また、堆肥の化学性においてもpH以外の顕著な違いは見られない (表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 堆肥pHの上昇により発生するアンモニアガスの防止対策として腐植酸資材が利用可能である。
2. 腐植酸資材の必要量は堆肥の種類により異なるので、必ずpH緩衝曲線を作成して目標値に必要な添加量を決定する。
3. 一次発酵時はpH変動が大きいため、pHの上昇に応じて腐植酸資材を随時添加することが望ましい。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:有機性廃棄物ゼロエミッションを目指した堆肥生産利用方式の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:佐藤克昭、片山信也、望月建治、芹澤駿治
発表論文等:
1)佐藤ら (2004) 廃棄物学会研究発表会論文集 15:538-540.

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