豚ふんと有機性廃棄物の混合を想定したメタン発酵の効率化


[要約]
メタンガス発生量は豚ふんと易分解性有機物(パン屑)を混合してC/N比14に調整し、同有機物負荷2.5g/lで約1.5倍、高有機物負荷である5.0g/lで約2.5倍に増加した。しかし、7.0g/l以上の高有機物負荷ではメタン発酵が停止する。

[キーワード]家畜ふん尿、メタン発酵、有機性廃棄物、バイオマス

[担当]静岡中小試・経営環境スタッフ
[連絡先]電話0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 環境問題やエネルギー問題が深刻さを増しており、メタン発酵はクリーンエネルギーとして注目されている。そこで、より効率的なメタン発酵を目指し、豚ふんと易分解性有機物としてパン屑を混合し、C/N比と有機物(以下VS)負荷量の違いによるメタン発酵の効率化を検討する。

[成果の内容・特徴]
1) 豚ふんとパン屑を混合してC/N比とVS負荷の組み合わせによる各試験区を設定した。メタン発酵槽は有効容積500mlのガラス瓶を用い、馴致20日後、37℃の中温メタン発酵を40日間行う。
2) 一日平均のメタンガス発生量は、豚ふんのみの試験区に対し、同VS負荷ではC/N比14で678.2mlと約1.5倍、試験区全体ではC/N比14とVS負荷5.0g/lで1106mlと約2.5倍、それぞれ最も多くメタンガスが発生する。 (表1図1
3) C/N比14ではVS負荷が7.0g/l以上、C/N比18では5.0g/l以上の時、酸発酵が起こり、メタン発酵が停止する。(表1
4) 消化液中のアンモニウムイオン濃度は豚ふんのみの試験区がメタン発酵に影響があると言われる3,000mg/lを超えていたが、パン屑を混合した試験区では2,000mg/lよりも低い水準であり、C/N比の調整によってアンモニウムイオンによる影響が低下している。(表1

[成果の活用面・留意点]
1) C/N比とVS負荷の調整はメタンガス発生量増加に有効であるが、メタン発酵はC/N比が高いほど、低VS負荷でもメタン発酵が不安定になりやすい可能性が示唆された。そのため、易分解性有機物との混合割合と投入量には、注意が必要である。
2) 豚ふんを用いたバイオマスプラント設置時の基礎的データとなる。
3) 有効容積500mlのガラス瓶による試験であり、より精度を高めるため、パイロットプラントによる実施試験が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:メタン発酵エネルギーの回収・利用システム
予算区分:県単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:和久田高志、大谷利之、関哲夫(静岡中小試)
発表論文等:和久田ら(2004) 静岡県中小家畜試験場研究報告15:25-29.

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