消石灰を添加した豚糞モミガラ堆肥は水溶性ミネラルが減少する


[要約]
豚糞モミガラ堆肥は消石灰添加率が高くなるほど、カリウム、リン、マグネシウム、ナトリウムの水への溶出率が低下する。

[キーワード]豚糞モミガラ堆肥、消石灰、水溶性ミネラル、溶出率

[担当]石川畜総セ・資源利用部・飼料環境科、石川農総研・生産環境部・土壌環境科
[連絡先]電話0767-28-2284
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]科学 ・参考

[背景・ねらい]
 作業等の都合から1週間分の豚糞を畜舎に貯留してまとめて堆肥化する場合に、豚糞が嫌気発酵して水分調整・通気を行っても堆肥化が進まないことがあり、原物当たり1%の消石灰添加によって通常に堆肥化することをすでに報告している(平成13年度関東東海北陸農業研究成果情報 I ,P14-15)。このような堆肥化における消石灰添加がミネラル成分の溶解性に対する影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
 豚糞モミガラ混合物(水分68%)に対し、消石灰を原物当たり0,0.5%,1.0%,1.5%添加して4週間堆肥化すると
1. 消石灰添加率が高いと風乾物pHは高いが、ECは低い(風乾物1:イオン交換水10抽出)。消石灰を添加しない堆肥に比べて添加率が高いほどカルシウム含有率は高いが、その他のミネラル含有率は無添加に比べ低い。(表1)。
2. EC測定液を用いた水への溶出率(抽出されたミネラル量/全ミネラル量)について、カルシウムは非常に低い。リン、マグネシウムは消石灰添加率が高いほど溶出率は低下する。カリウム、ナトリウムも消石灰添加によって溶出率が無添加より低下する(図1)。
3. 酢酸アンモニウム溶液を用いた溶出率について、消石灰を添加するとカリウムとナトリウムは水溶性の割合が低下して交換性塩基の割合(酢酸アンモニウム溶液の溶出率−水の溶出率)が無添加より増加する(図2)。
4. 塩酸溶液を用いた溶出率について、カルシウムは水にわずかしか溶けないがpH約2では90%以上溶出する。リンは消石灰添加率が高いほど酸可溶性の割合(塩酸溶液の溶出率−水の溶出率)が高くなる(図3)。
5. 消石灰添加率が1%以上では、マグネシウムの酸可溶性の割合(塩酸溶液の溶出率−水の溶出率)が70%以下と低く、pH2程度の酸性条件下で溶出しない割合が増加する(図3)。
6. 消石灰添加による水不溶・酸可溶のマグネシウムの増加のうち、水不溶で酸や土壌中で容易に溶解する堆肥中リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP:平成15年度関東東海北陸農業研究成果情報III,174-175)によるものは少ない。

[成果の活用面・留意点]
1. やむをえず消石灰を添加して堆肥化した場合でもEC上昇を気にしなくてもよい。
2. 消石灰添加時のアンモニアガス発生量の増加や石灰過剰の堆肥となるので、EC低下目的で消石灰を添加しない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:嫌気的条件を経た豚糞の堆肥化技術
予算区分:国補(生産環境)
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:高橋正宏・梅本英之
発表論文等:
1)高橋・梅本 (2005) 日本畜産学会報76(2):191-199

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