堆肥中資材別のデタージェント分析による分解率


[要約]
デタージェント分析による堆肥中有機物の分解率は、豚糞・牛糞はNDF−ADFの分解率がもっとも高い。モミガラ分解率は家畜糞よりもかなり低い。リグニン分析の前処理には酸性デタージェント処理より中性デタージェント処理が適している。

[キーワード]堆肥、デタージェント分析、リグニン、分解率

[担当]石川畜総セ・資源利用部・飼料環境科
[連絡先]電話0767-28-2284
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]科学 ・参考

[背景・ねらい]
 家畜糞堆肥は比較的分解しやすい家畜糞と分解しにくい木質系資材やモミガラなどを原料として用いて製造されている。また、副資材の種類・混合割合の違いや環境条件等によって腐熟の進行が一様でないことから、単純にC/N比をもって各種堆肥の腐熟度を評価することは困難である。
 そこで、堆肥の腐熟度の指標とするため粗飼料分析に利用されているデタージェント分析を用いて資材別に分解率に明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. もっとも分解率の高い成分はNDF−ADF(中性デタージェント繊維−酸性デタージェント繊維)であり、4週間で豚糞はほぼ100%、牛糞は60%分解し、12ヵ月で牛糞は100%分解する。しかし、モミガラやオガクズ(針葉樹)では12ヵ月でも30%程度しか分解しない。(図1)。
2. 12ヵ月後のADF分解率は、牛糞がもっとも高く約50%、豚糞、オガクズが約30%であるが、モミガラはほとんど分解しない。(図2)。
3. NDFを硫酸処理した中性デタージェントリグニン(NDL)が時間の経過とともに分解が進み、牛糞・豚糞ともに12ヵ月で約40%分解する(図3)。
4. 粗飼料分析に一般的に用いられるADFを硫酸処理した酸性デタージェントリグニンはいずれの資材でもほとんど分解しないかわずかしか分解せず、堆肥化過程(1〜4週後)でADLとNDLの含有率が逆転する。別のリグニン分析方法を用いた既往の成果と類似した分解率を示すNDLが堆肥中リグニン分析法として適している。
5. オガクズは窒素含有率がわずかに高いだけで(4週後:無添加1.2%/DM,窒素添加1.3%/DM)6ヵ月以降のNDF−ADF、NDF、ADF、NDL分解率が高い(図123)。

[成果の活用面・留意点]
1. 原料と堆肥のデタージェント分析結果を比較して有機物の分解程度が推測できる。
2. この分解率は4週間の通気とその後は通気のない堆積状態での分解率であり、長期間にわたる撹拌・通気では分解速度や分解率が高まる可能性がある。
3. いずれの分解率も堆肥化過程で分解・合成を経た見かけの分解率であり、真の分解率とは異なる。OCC(有機物−ADF)の見かけの分解率は分解途中の中間生成物等を含むため、分解性の指標としては適さない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:嫌気的条件を経た豚糞の堆肥化技術
予算区分:国補(生産環境)
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:高橋正宏
発表論文等:
1)高橋(2004) 日本畜産学会報.75:587-598.

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