ニホンナシ養液土耕栽培における高糖度果実生産のための養水分管理法


[要約]
根域制限と養液土耕(点滴灌水施肥)を組み合わせたニホンナシ「幸水」の栽培において、果実肥大期後半(7月上旬〜収穫完了)の養分供給を停止して灌水のみとすることにより、気象変動に関わらず13度程度の高糖度果実が生産できる。

[キーワード]ニホンナシ、根域制限、養液土耕、高糖度

[担当]石川農総研・育種栽培部・果樹科
[連絡先]電話076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 ニホンナシはほとんどが露地栽培であることから、冷夏年には低糖度傾向となり、逆に高温乾燥年には水不足で果実肥大が劣りやすい等、気象の年次変動の影響を受けやすい。そこで、高品質果実の安定生産を目的として、根域制限と養液土耕を組み合わせた栽培法における養水分管理法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 本方法は、遮根シートの上に用土を高畝状に1樹当たり約600リットル載せてニホンナシ「幸水」を植栽し、高畝の上には液肥混入器を接続した点滴チューブを配置して灌水と施肥を同時に行うものである(図1)。
2. 乾燥ストレスを与えないための日給液量の目安は、最も蒸発散量の大きい盛夏期で葉枚数100枚当たり1.0リットル程度である(図2)。
3. 養液の窒素濃度を50ppmとすることで健全な生育ならびに果実生産が可能である。さらに、果実肥大期後半の7月上旬から収穫完了までの養分供給を停止し、灌水のみとすることにより、慣行栽培で品質の劣る冷夏年(2003年)においても糖度は13.0度と高く安定し、果実肥大も十分である。(表1)。
4. 本栽培法による8年生時の年間必要灌水量は約480t/10aであり、年間窒素施肥量は慣行施肥体系の半分に相当する約14kg/10aである(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 用土は砂壌土とし、pH6.0、腐植含有率3%となるようにあらかじめ土壌改良資材で調整したものを使用した。
2. 根域制限を開始して4か年のデータであり、今後、収量性維持の可能年限について用土容量の検討と併せて確認する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水田転換樹園地拡大のためのニホンナシの早期成園化と平易な栽培管理技術の確立
予算区分:国庫補助(新技術地域実用化)・県単
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:中野眞一、井須博史、木下一男、松田賢一

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