SSRマーカーによるリンゴの品種識別と親子鑑定


[要約]
リンゴ及びナシで開発されたSSRマーカーを用いることにより、リンゴの一般栽培品種、国内外からの導入品種等の品種識別、クローンの確認、三倍体品種の倍数性の確認ならびに品種の親子関係の確認が可能である。

[キーワード]リンゴ、SSR、品種識別、親子鑑定

[担当]長野果樹試・育種部、果樹研・遺伝育種部・落葉果樹ゲノム研究チーム、種苗管理セ・調査研究課
[連絡先]電話026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・果樹、果樹・育種
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 SSR(simple sequence repeat)マーカーは、多型性が高いこと、信頼度が高いこと、共優性の遺伝様式を示すこと、ゲノム中に豊富に存在すること等の特徴をもつため、近年、親子鑑定や品種識別への利用などから注目されている。そこで、リンゴの一般栽培品種、国内外からの導入品種、本県育成の「シナノスイート」、「シナノレッド」、「シナノゴールド」など合計39品種・系統について、リンゴ由来およびナシ由来のSSRマーカーを利用して品種識別ならびに親子鑑定の可能性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. リンゴで開発されたSSRマーカー7種類(02b1,28f4,CH01F02,CH02B12,CH02B03b,CH02B10,CH02F06)及びナシで開発されたSSRマーカー5種類(KA4b,NH005b,NH009b,NH015a,NB109a)を用いることにより、39品種・系統は図1のように品種識別することができる。また、2か所(長野果樹試、果樹研)で保存されている「王林」、「千秋」、「Golden Delicious」および「Jonathan」は、それぞれ全く同じ遺伝子型を示すことから、遺伝子型の一致によりクローンの確認ができる(図1)。
2. 同一の交雑組み合わせにより育成された品種「シナノドルチェ」および「シナノゴールド」(Golden Delicious×千秋)、「シナノレッド」,「リンゴ長果16」および「T・V-215」(つがる×Vista Bella)は、それぞれ異なる品種・系統として識別される(図1)。
3. 三倍体品種の「高嶺」では、2種類のSSRマーカーでそれぞれ3つのフラグメントが確認され、フラグメント数からも品種の倍数性が支持される。
4. 「シナノスイート」、「シナノゴールド」など14品種・系統とそれらの交雑親である品種・系統を用いての親子鑑定では、両親由来の対立遺伝子が矛盾なく伝わっていることから、両親由来の対立遺伝子の有無により親子関係の確認ができる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 枝変わりの場合は、今回使用したSSRマーカーでは判別できず、原品種と同じ遺伝子型である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:落葉果樹のDNAマーカーの作出及びそれを利用した新品種育成の効率化に関する研究
予算区分:交付金・県単
研究期間:2002年度
研究担当者:峯村万貴、山本俊哉(果樹研)、木村鉄也(種苗管理セ)、小松宏光、塚原一幸、松田長生(果樹研)、林 建樹(果樹研)

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