低コストで設置が簡単なトマト袋培地栽培システム


[要約]
土壌を主体とした培地を使用する袋培地栽培は設置及び撤去が簡単で低コストである。また、かん水をpFセンサを用いた潅水制御器により排液率を5%以下に抑え環境負荷軽減できる栽培である。

[キーワード]トマト、隔離栽培、省力化、袋培地栽培システム

[担当]愛知農総試・東三河農研・野菜グループ
[連絡先]電話0532-61-6235
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 トマトでは土壌病害対策及び品質向上のため隔離床栽培等の導入も見られるが、一般的に栽培ベッドや架台を有する場合は設備費が高く、設置工事も多労を要する。また、株当たりの培地が少量の場合は生育を安定せるために排液も多くなる。そのため、袋培地を使用した低コストで設置及び撤去が簡単で排液が少ない栽培システムを開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 袋培地は土壌を主体にバーク堆肥、ピートモス、バーミキュライト等を配合し、設置の作業性を考え1袋の培地量は30L(比重0.6、重量18kg)とする。袋体はポリエチレン製で表面には縦横それぞれ5mm間隔に直径約0.06mmの微細孔を穿設した袋培地栽培用に開発したものとする。
2. 整地したほ場に雑草等を防ぐためのシートを全面に敷く。そして、防根透水シートを帯状に敷き、その上に袋培地を列状に配置する。1袋当たり4株定植するので袋培地上面に直径10cmの定植穴を4か所あけ、袋培地底部に排水孔を設置する(図1)。
3. 育苗はポット育苗を行い、定植はポットから苗を取り出し無底ポットに入れ替えて袋培地上の定植穴に置くことで完了する(図1)。この定植方法により従来に比べて定植及び栽培終了後の片づけ作業時間が大幅に軽減できる。
4. 点滴チューブは圧力補正機構を有するものを用いて給液量の均一化を図る。また、袋培地間に位置する不要な点滴孔は専用のプラグで塞ぐ。さらに点滴チューブを無底ポットの上に配置する(図2)。
5. 給液管理については早朝1回、液肥の給液(施肥かん水)を行い、その1時間後より夕方までpFセンサを用いた潅水制御器でかん水を自動制御する。このことにより表2のように給液量の多い半促成作型でも収量・品質を落とさずに排液率を5%以下にすることができる。排液については袋底部の排水孔より土壌浸透させる。
6. 袋培地システムを導入する場合に必要な主な資材及び給液装置類の導入経費としては表1に示すように10a当たり2,400株定植で合計1,351千円となり、培地は連用できることから1作当たりでは安価である。

[成果の活用面・留意点]
1. 施肥かん水とかん水を別々に行い、それぞれ1回の給液量は株当たり200mlとする。
2. 水分センサはトマトの生育等に問題がなく、位置もほ場を代表すると思われる袋培地(1か所)に設置する。
3. 栽培終了後の片づけ作業時には培地と無底ポットの境界面を鋸鎌で切断することにより、袋培地面は平坦となり次作の無底ポットの定植を容易に行うことができる。また、無底ポットは繰り返し使用が可能である。
4. 土壌消毒は特に必要なく、仮に土壌病害虫の発生した場合は袋単位で交換を行う。
5. 袋培地は3〜5年連用ができ、使用後の袋体は肥料袋同様に廃プラスチックとして処分し、培地は有機物(トマト根)を多く含んだ土壌として耕地に投入できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:施肥・潅水精密制御による品質保証できるトマトの袋培地生産技術
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:金子良成、榊原正典、今川正弘
発表論文等:1)特願:2005−13985
      2)金子・今川(2004)園学雑73別2:390.

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