イチゴ萎黄病抵抗性に関与する主働遺伝子が存在する


[要約]
イチゴ萎黄病に対する抵抗性主働遺伝子が存在する。‘アイストロ’、‘アスカウェイブ’および‘芳玉’は質的抵抗性を有しているとみられ、‘アスカウェイブ’と‘サンチーゴ’のF1実生の分離から抵抗性主働遺伝子の存在が確認できる。

[キーワード]イチゴ、萎黄病、病害抵抗性、質的抵抗性、主働遺伝子、分離

[担当]三重科技セ・農業研究部・園芸グループ
[連絡先]電話0598-42-6363
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 萎黄病はイチゴ栽培における重要病害の一つで発生すると甚大な被害をもたらす。近年急速に普及した品種には萎黄病に弱い品種がみられ、土壌伝染性で防除が困難であるため、抵抗性品種の育成が望まれている。抵抗性品種の育成にあたって、効率的に育種を進めるため萎黄病抵抗性に関する遺伝様式を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 萎黄病菌を浸根接種して水温25±2℃に保った湛液培養液でイチゴを2ヶ月間水耕栽培すると、図1に示した品種の中で、‘アイストロ’、‘アスカウェイブ’および‘芳玉’では全く病徴がみられないのに対して、その他の23品種は発病する。また、発病がみられる23品種では発病指数の変異は連続的になる。このことから、前者3品種は主働遺伝子が関与する質的抵抗性を有し、後者23品種の間には量的抵抗性の変異が存在すると推定できる。
2. 抵抗性品種‘アスカウェイブ’と罹病性品種‘サンチーゴ’を交配したF1実生は、抵抗性の群と罹病性の群に分離する(図2)。イチゴは栄養繁殖性作物でヘテロ性が高いためF1世代で分離を生じることから、この結果は、イチゴ萎黄病に対する抵抗性主働遺伝子の存在を特徴づけるものである。

[成果の活用面・留意点]
1. イチゴ萎黄病の抵抗性主働遺伝子を有する品種を交配親に用いることによって、抵抗性個体を容易に得ることができる。
2. イチゴでは確認された主働遺伝子が少なく8倍体で遺伝様式が複雑なため遺伝に関する研究は遅れているが、今回存在が確認された萎黄病抵抗性の主働遺伝子はイチゴ遺伝研究においてマーカーの一つとして利用することができる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:植物遺伝資源の収集保存と特産園芸品種の開発
予算区分:県単
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:森 利樹、北村八祥、黒田克利
発表論文等:
1)Mori et al.(2005)J. Japan. Soc. Hort. Sci. 74:57-59.

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