組換えイネを用いた新規植物免疫反応活性化物質の選抜方法


[要約]
蛍光タンパク質遺伝子(GFP)と誘導性プロモーターを連結して導入した組換えイネを用い、イネの免疫反応による遺伝子発現を可視化することにより、いもち病防除のための植物免疫活性化物質の簡便な選抜ができる。

[キーワード]イネ、植物免疫反応、蛍光タンパク質、PBZ1プロモーター

[担当]中央農研・北陸地域基盤研究部・稲組換研究チーム
[連絡先]電話025-526-3238
[区分]関東東海北陸農業・生物工学、作物・生物工学
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 植物の持つ免疫反応(植物の病害抵抗性に関わるシグナル伝達系を介した、植物の病原菌に対する防御反応システム)を高めることによって病害抵抗性を付与する物質の開発は、重要な課題である。植物の免疫反応の活性化は、病害抵抗性遺伝子の発現等で確認できるが、そのためには核酸を単離し、ノーザンハイブリダイゼーションを行う必要がある。この方法では、時間とコストがかかり、数多くのサンプルを処理することは困難であるため、植物免疫活性化物質の簡便な選抜技術の開発が必要とされている。

[成果の内容・特徴]
1. 作出した日本晴由来の組換えイネには、いもち防除剤として広く使用されているプロベナゾール剤で発現が誘導される遺伝子PBZ1(PR10クラスに分類される遺伝子)のプロモーター領域もしくは、テルペノイド合成系の遺伝子D9/OsCyc2/OsCPS2のプロモーター領域とオワンクラゲの蛍光タンパク質の遺伝子であるGFP(Green Fluorescent Protein)を融合した遺伝子(図1)が導入されている。PBZ1もしくは、D9/OsCyc2/OsCPS2遺伝子の発現上昇は、植物免疫活性化の指標であり、この導入遺伝子の発現上昇は、植物免疫反応活性化を示している。
2. 作出した組換えイネでは、いもち菌の接種により(図2)、また、一部のいもち病防除剤の主成分であるプロベナゾール処理や(図3図4)、いもち菌から精製された新規免疫反応活性化物質であるセレブロシドB処理により(図3図4)、GFPタンパク質の発現誘導が確認できる。プロべナゾールは,タバコにおいてウイルスに対する増殖抑制効果がある事が確認されている。
3. 作出した2種類の組換えイネと簡易型GFP検出装置を用いることによって、簡便に植物免疫反応により活性化される病害抵抗性遺伝子の発現誘導を可視化することが可能になり、数多くの免疫反応活性化物質の一次スクリーニングが可能となる。

[成果の活用面・留意点]
1. PBZ1遺伝子は環境ストレスにより発現する場合があるので注意が必要である。
2. 本研究は、いもち菌及びいもち菌防除剤に関して行った結果を示したが、他の病原菌防除剤のスクリーニングに応用する場合には,応用するには諸条件の検討が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:病害抵抗性制御遺伝子osRacの改変によるいもち病抵抗性イネの作出
課題ID:03-12-03-01-04-03
予算区分:組換え植物
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:森野和子、大島正弘(作物研)、川田元滋、梅村賢司(明治製菓株式会社・生物産業研究所)、岩田道顕(明治製菓株式会社・生物産業研究所)
発表論文等:(1)特願出願(2004) PCT/JP2004/004755

目次へ戻る