トマトの環境保全型養液栽培における作型と培養液処方


[要約]
閉鎖型の環境保全型養液栽培システムでは、促成栽培および促成長期どり栽培とも排液を出すことなく栽培できるため、長期間の栽培にも実用性が高い。改良2処方は改良処方に比べて栽培後半においても草勢が維持され、収量も同程度得られる。

[キーワード]トマト、閉鎖型養液栽培、促成栽培、促成長期どり栽培、培養液処方

[担当]栃木農試・園芸技術部・野菜研究室
[連絡先]電話028-665-7142
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 当場で開発した環境保全型養液栽培システムを用いて、促成長期どり栽培および促成栽培における実用性を検討する。また、見かけの養水分吸収量から作製した改良処方の一部を変更した改良2処方について、両作型で適応性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 改良2処方は、見かけの養水分吸収量に基づき作製した改良処方に比べて、カリウム濃度をやや低く、カルシウム及びマグネシウム濃度をやや高くしたものである(表1)。
2. 両作型とも収穫始期の生育、開花・収穫日、着花数は培養液処方に差がない。しかし、各花房の収穫期の茎径は促成長期どり栽培では改良2処方が第9花房以降でやや太く、促成栽培では第5花房以降において改良2処方がやや太く推移する(データ略)。
3. 収量及び1果重は、両作型とも培養液処方間に大差はない(図1)。
4. 培地内養液ECは、図2の給液ECのとおり管理することで、いずれの培養液処方を用いても両作型とも概ね2dS/mを超えない。また、両培養液処方とも培地内養液中に無機成分が蓄積しないため、各無機成分はバランス良く吸収される。
5. 促成長期どり栽培および促成栽培における給液管理モデルは図3のとおりである。培養液処方に改良2処方または改良処方を用いることにより、両作型とも排液を全く出すことなく栽培できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 促成栽培は9月上旬播種、促成長期どり栽培は7月下旬播種の作型で、品種は「ハウス桃太郎」である。
2. 環境保全型養液栽培システムでは、培地および毛管吸水槽の2か所に独立して給液でき、毛管吸水槽の培養液水位は三極電極等により培地底面から培養液面までの距離が6cmになったら2cmまで給液する。培地への給液量は、植物体の吸水量の約半分を目安とする。
3. 改良2処方および改良処方は単肥で配合できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:草姿管理等による施設を中心とした果菜類の省力・快適化生産技術の確立
予算区分:国補(地域基幹)
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:石原良行、人見秀康、中山千知

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