飛騨地域に適した飼料イネ品種とサイレージの発酵品質


[要約]
岐阜県飛騨地域のような中山間地域では、飼料イネ品種のクサホナミ、クサユタカ、ホシアオバが地際刈り乾物収量が多く、黄熟期まで生育し、サイレージ調製することが可能である。

[キーワード]中山間地域、飼料イネ、稲発酵粗飼料、飼料用モミ、サイレージ

[担当]岐阜畜研・飛騨牛研究部、酪農研究部
[連絡先]電話0577-68-2226
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、畜産草地(草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 多くの飼料イネ品種が提供されているなか、岐阜県飛騨地域の気候条件や飼料イネの利用形態に適した品種を選抜する必要がある。また、飼料イネを有効に活用するためには、イネの収穫時期別のサイレージ特性を把握する必要がある。そこで、飼料イネ品種間の収量の違いを調べるとともに稲発酵粗飼料(以下、イネWCSという)と飼料用モミを用いたソフトグレインサイレージ(以下、SGSという)の発酵品質の調査を実施した。

[成果の内容・特徴]
1. 飼料イネ7品種(アキチカラ、クサホナミ、クサユタカ、ホシアオバ、クサノホシ、ユメアオバおよび瑞豊)の岐阜県飛騨地域の気象条件(図1)での生育特性は、表1に示したように、移植から黄熟期までの日数は、最短でアキチカラの95日、最長でクサホナミの133日であり、瑞豊とクサノホシは晩秋までに黄熟期に至らない。
2. 黄熟期の水分含量は品種間に差はなく、地際刈り乾物収量は10a当たり1,424kgから1,679kgまでのばらつきがある。また、乾物の子実/茎葉比は、アキチカラ、クサユタカおよびユメアオバで大きく、ホシアオバで小さい。また、イネWCSのpHは、最高5.62(クサホナミ)、最低4.80(クサユタカ)である(表1)。したがって飛騨地域での適品種はクサホナミ、クサユタカおよびホシアオバである。
3. アキチカラを供試して収穫時期別にイネWCSおよびSGSを調製(容量900mlのボトルを用いて、イネWCSはイネ全体を用いて材料を2cmに切断し、SGSはモミのみを用いて、水分や乳酸菌等無添加にてサイレージを調製)すると、イネの登熟に伴い、イネWCS、SGSとも、pHが上昇し、水分含量、乳酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸が減少する(表2)。したがって、水分や乳酸菌等を無添加でサイレージ調製するには、乳熟期から黄熟前期までに調製することが望ましい。

[成果の活用面・留意点]
1. 岐阜県飛騨地域と気象条件の類似した地域での飼料イネ栽培と稲発酵粗飼料の調製に参考データとなる。
2. 高品質稲発酵粗飼料を調製するには、乳酸菌などの添加物の活用の検討も必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:飼料イネに対応した省力的生産・調製・利用技術の確立
予算区分:国補(地域基幹農業技術体系化促進研究)
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:丸山 新、横山郁代、浅井英樹、浅野智宏、小川正幸、澤田幹夫
発表論文等:1)丸山ら(2005)Asian-Aust. J. Anim. Sci. Vol 18, No. 3

目次へ戻る