小麦「イワイノダイチ」の奨励品種採用


[要約]
「イワイノダイチ」を奨励品種に採用する。「イワイノダイチ」は早播きできる早生種で、梅雨前に収穫できる。「農林61号」に比べて倒伏しにくく、耐湿性があり、多収、良質で、製粉性に優れ、灰分が低く、めん色が明るい。やや低アミロース含量でめんの食感が良好である。

[キーワード]コムギ、イワイノダイチ、奨励品種、やや低アミロース、加工適性、秋播性早生

[担当]愛知農総試・作物研究部・作物グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 愛知県の小麦栽培面積は約6,000haに拡大し、中生種の「農林61号」のみ栽培されているが、倒伏しやすく、成熟期が遅いため、梅雨入り後の収穫(2000年産、2003年産)で雨害による品質低下等の問題がある。また、愛知県麦民間流通地方連絡協議会の中で、「農林61号」より加工適性の高い品種の導入が実需者から継続して要望されてきた。このため、梅雨入り前に収穫できる早生で、栽培特性、外観品質、加工適性の優れる品種を選定し、県産小麦の品質評価向上を図る。

[成果の内容・特徴]
 「イワイノダイチ」は「農林61号」と比べて以下の特徴をもつ。
1. 出穂期で6日、成熟期で3日程度早い早生である(表1)。
2. 秋播性程度IVで茎立ちが遅く凍霜害を受けにくいため、10日程度早播きできる。梅雨前に収穫可能なため、雨害による品質低下を回避できる。
3. 稈長が約10cm短く、倒伏しにくい。穂長はやや長く、穂数はやや多い(表1)。
4. 約10%多収で、粒が大きく、外観品質がよい(表1)。
5. 原粒の蛋白質含量はやや低く(表1,2)、灰分含量は低い(表2)。
6. 製粉性(製粉歩留、ミリングスコア、ふるい抜け)が優れる(表2)。
7. 粉色はくすみ(a*)が少なく、明るい(L*)クリーム色(b*)を呈し、色相に優れる(表2)。
8. やや低アミロース含量で、ゆでめんの食感(粘弾性・滑らかさ)が優れる(表3)。
9. 土壌過湿条件での精子実重が多く耐湿性がやや勝る(表4)。低アミロ耐性はやや勝る(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 普及地域は、小麦主産地の西三河平たん部を中心とし、「農林61号」の一部に替えて普及する。普及予定面積は、2008年産で2,000ha(県内小麦栽培面積の3分の1)。
2. 「農林61号」の一部に替えて導入することで、「農林61号」の栽培面積が適正規模に縮小されて適期収穫が容易となり、雨害による品質低下を回避しやすくなる。
3. 蛋白質含量確保のため、追肥を増量する。
4. 品質・加工適性からみた播種早限を確定する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:小麦奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:1996〜2004年度
研究担当者:杉浦直樹、坂紀邦、加藤恭宏、吉田朋史、辻孝子、井澤敏彦、釋一郎、澤田恭彦

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