稲発酵粗飼料向き極晩生水稲新品種候補「関東飼215号」


[要約]
「関東飼215号」は温暖地では極晩生に属する水稲粳種で、長稈で茎葉多収型の稲発酵粗飼料向き系統である。玄米収量は劣るが、地上部全重が多収で、未消化籾の排泄量が少なく、いもち病圃場抵抗性が強い。

[キーワード]イネ、水稲、飼料イネ、稲発酵粗飼料、茎葉多収、未消化籾

[担当]作物研・稲研究部・多用途稲育種研究室
[連絡先]電話029-838-8808
[区分]作物・稲、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 食糧自給率の向上を目的とした国内での飼料自給率の向上、および米の生産調整の円滑化、さらに、貯水力等の水田の機能維持を一挙に図る目的で、稲を発酵粗飼料として利用する飼料イネの生産が進められている。多収で耐病性の強い飼料イネが求められている。また、稲発酵粗飼料の給与では未消化籾が40%に達する場合があり、問題視されている。そこで、いもち病に強く、籾収量によらずに茎葉重により可消化養分総量(Total digestible nutrients, TDN)が高くなる品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「関東飼215号」は、インド型で耐倒伏性極強の多収系統である「中国117号」と「コシヒカリ」の交配後代から育成された系統である。
2. 育成地における早植え栽培での出穂期は、「クサホナミ」より遅く、「はまさり」並の極晩生である。成熟期は「はまさり」より8日遅い。
3. 稈長は1mを超える極長稈で、穂長は「はまさり」より長い。穂数は少なく、着粒密度は“中”で、草型は“茎葉型”である。
4. 芒の多少は“中”で、中程度の長さの芒を有する。ふ先色は“褐”、脱粒性は“難”である。葉身ならびに籾には毛茸がなく無毛性であり、収穫時の粉塵が少ない。
5. 子実の収量性は「はまさり」より劣るが、地上部全重は「はまさり」、「クサホナミ」より多収である。地上部のTDN収量は「はまさり」、「クサホナミ」より高い。未消化籾の排泄量は「クサホナミ」の半分以下である。玄米の外観品質は「はまさり」並である。
6. いもち病真性抵抗性遺伝子はPia,Pikを保有すると推定される。葉いもち圃場抵抗性は“極強”であり、穂いもち抵抗性は“中”である。また白葉枯病抵抗性は「日本晴」よりやや劣る“中”である。縞葉枯病には“罹病性”で、穂発芽性は“中”である。
7. 長稈ではあるものの稈が太く粗剛であり籾重が低いため、耐倒伏性は“強”である。湛水直播栽培では発芽苗立性は良いが、長稈かつ強稈であるため転び型倒伏が生じる場合がある。

[成果の活用面・留意点]
 「はまさり」「クサホナミ」より地上部全重が多収で、現地等で問題とされている未消化籾の排泄量が少なく、温暖地・暖地に適する。湛水直播栽培の多肥条件では倒伏することもあり、極端な多肥は避ける。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:温暖地東部向けホールクムップサイレージ用イネ品種の育成
解題ID:08-01-01-01-06-04
予算区分:フラニチ3系
研究期間:1991〜2004年度
研究担当者:加藤 浩、安東郁男、平林秀介、出田 収、竹内善信、平山正賢、太田久稔、佐藤宏之、井邊時雄、根本 博、堀末 登、高舘正男、坂井 真、田村和彦、青木法明、大川泰一郎、石原 邦、中川宣興、石井卓朗、飯田修一、前田英郎

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