黒ボク土において不耕起狭畦栽培した大豆の生育特性


[要約]
黒ボク土で不耕起狭畦栽培を行ったときの大豆の生育は、慣行栽培と比べて前半の生育が劣るが後半は差がない。灰色低地土と比較すると、前半の生育が劣り後半の生育が優る。収量、百粒重、粗蛋白質含有率は慣行栽培と差がなく、灰色低地土より優る。

[キーワード]ダイズ、不耕起栽培、狭畦、黒ボク土、灰色低地土

[担当]栃木農試・作物経営部・作物研究室
[連絡先]電話028-665-7076
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 栃木県における農耕地の土壌分布は、水田、畑土壌併せて黒ボク土が54%、灰色低地土が29%となっており、黒ボク土および灰色低地土が農耕地の大部分を占めている。そこで、黒ボク土において不耕起狭畦栽培した大豆「タチナガハ」の根の分布状態・生育経過・収量等の実態を調査し、慣行栽培、灰色低地土と比較することによって大豆不耕起栽培の基礎資料を得る。

[成果の内容・特徴]
1. 黒ボク土で不耕起狭畦栽培を行ったときの生育初期(初生葉展開期)での根量(側根数・乾物重)は、慣行栽培と差が見られず、灰色低地土の慣行栽培、不耕起狭畦栽培よりも少ない。生育中期(開花盛期)での根量は、黒ボク土および灰色低地土の慣行栽培より土壌表層(0〜5cm)の側根数が多く、灰色低地土の不耕起狭畦栽培と差がない。(表1)。
2. 黒ボク土における不耕起狭畦栽培の大豆の地上部乾物重は、前半の生育が慣行栽培より劣り、生育後半には差が認められなくなる。灰色低地土の慣行栽培、不耕起狭畦栽培と比較すると、前半の生育が劣り後半の生育が優る。この要因として、灰色低地土は生育前半に根がよく張るため、前半の生育量が大きくなると考えられる(表12)。
3. 黒ボク土における不耕起狭畦栽培の収量および収量構成要素は、慣行栽培と差が認められない。灰色低地土の慣行栽培、不耕起狭畦栽培と比較すると、子実重、百粒重及び粗蛋白質含有率が優る(表3)。
4. 黒ボク土における不耕起狭畦栽培の倒伏は、慣行栽培と差がない。灰色低地土の慣行栽培、不耕起狭畦栽培との差もない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 水田転換畑でタチナガハを用いた試験成績であり、異なる品種や畑圃場では傾向が異なる可能性がある。
2. 不耕起狭畦栽培普及の資とする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:大豆の不耕起・高品質・安定多収生産技術の確立
      土壌別大豆根圏と土壌物理性の実態把握
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:新井申、相吉澤秀夫
発表論文等:地域基幹農業技術体系化促進研究「不耕起・無中耕・無培土栽培を基幹とした大豆の超省力安定栽培技術」研究成果報告書(2004):10-12.

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