ダイズ省力摘心作業機の開発と生育改善効果


[要約]
愛知県西三河沖積地帯のダイズ栽培における過剰な栄養成長を制御するために、乗用管理機前部に2基のレシプロ型刈り取り機を搭載した高能率(0.85ha/h)の摘心作業機を開発した。開発機の摘心により主茎長が短縮され倒伏が軽減される。早期(中耕期頃)の摘心は莢数を抑制し増収効果は小さいが,開花期直前の摘心は特に分枝莢数を向上させ増収効果が高い。

[キーワード]ダイズ、摘心、機械化、倒伏軽減、増収効果

[担当]愛知農総試・作物研究部・作物グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 愛知県西三河沖積地帯のダイズ栽培では、地下水位が高く土壌に常に十分な水分があるため、栄養生長が旺盛で徒長しやすく、蔓化や倒伏が大きな低収要因となっている(平成14年度成果情報)。このため、当該地域では播種を遅らせて生育を抑制し、蔓化や倒伏を回避する努力がなされている。しかし、一戸当たりの栽培面積が非常に大きくなった現状では、播種期を遅らせる方策は適期内の播種作業を困難にするため合理的とは言えない。そこで、古くからダイズの徒長や蔓化防止に有効とされる「摘心」を機械化し、当該地域のダイズ生育と栽培体系を改善する。

[成果の内容・特徴]
1. 開発した摘心作業機(以後、本機)は、水田乗用管理機の前部に刈り幅1200mmの茶樹切り戻し用レシプロカッター(K式中刈機)を2基搭載したもので、輪距を調整すれば65〜90cmの条間に適用できる。約1.0m/sの作業速度で4条を同時に摘心でき、条間70cmのほ場に適用した場合のほ場作業量は約0.85ha/hである(図1表1)。
2. 本機には、葉への傷害を極少にするためと、カッターを主茎の茎頂に作用しやすくするために、安全ガードを兼ねた押し倒しバーが装着されている(図1)。主茎長が約50〜80cmのダイズを主茎長より5cm低い刈り高さにカッターを設定して摘心を行う場合、主茎の茎頂が切断される個体の割合は約60%である(データ略)。
3. 本機の摘心により主茎長が短縮され、倒伏が軽減される(図2表2)。中耕期(播種後30日)から開花直前(播種後65日)の範囲では、遅い処理で分枝莢数の向上により総莢数が増加して収量改善効果が大きくなる。早い処理では主茎莢数が減少し総莢数がやや制限されるが、大粒比率が向上し収量の減少は見られない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本情報は台風の来襲が極めて多かった2004年の愛知県安城市、西尾市、岡崎市、豊田市の現地ほ場(品種:フクユタカ)における当場試作機の実証結果に基づいている。
2. 2005年には農機メーカーが本機を基に試験機を製作予定である。
3. 開花期直前の摘心では莢数の増加により小粒化するため、開花期以降の肥効が期待できる施肥法(平成13年度成果情報)と組み合わせを検討する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:沖積地帯における高生産性大豆栽培技術の開発
予算区分:ブラニチ2系
研究期間:2004年度
研究担当者:濱田千裕、林 元樹、小西敏郎、谷 俊男、平岩 確、落合幾美、井上勝弘、澤田恭彦

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