ラピッドビスコアナライザーによるコムギのアミロース含量タイプの推定法


[要約]
ラピッドビスコアナライザーによりコムギのアミロース含量タイプの判別を行う手法を開発した。全粒粉を用い、糊化特性値のブレークダウン(BD)とセットバック(SB)とを指標にし、SB/BD比を併用することで、各アミロース含量タイプを群別することができる。

[キーワード]コムギ、RVA、加工適性、糊化特性、アミロース、分類

[担当]愛知農総試・作物研究部・小麦指定
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]作物・冬作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 近年、もち、低アミロース、やや低アミロース、通常アミロース(野生型)等、アミロース含量タイプの異なったコムギ新品種・系統が育成されている。アミロース含量タイプによりめんの食感が異なり、やや低アミロース品種群の官能評価が安定して高いことが多い。そこで、本田ら(香川農試研報2000)の手法を改良して、これら品種・系統の小麦粉糊化特性をラピッドビスコアナライザー(RVA)を用いて調査し、より簡便で育種選抜に利用可能なアミロース含量タイプの判別手法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 測定はRVA Super3を用いて、Noodle Method (Newport Scientific 1997)により行う(図1)。分析試料にはコムギ全粒粉4g又はブラベンダーテストミルで製粉したA粉3.5g(水分14%の場合)を用いる。サンプル当たりの測定時間は20分間である。
2. 糊化特性値のうちで、セットバック(SB)/ブレークダウン(BD)比はアミロース含量タイプと対応した値を示し、A粉の場合、通常群で1.4〜1.9、やや低群では「きぬの波」(0.7)を除き0.8〜0.9、低群では0.6〜0.7、もち群で0.3と、アミロース含量タイプ判別指標に利用できる(表1)。
3. 最終粘度(FV)−最高粘度(MV)の値もアミロース含量タイプと対応しており、A粉の場合、通常群で35〜60と正で、やや低群では「きぬの波」(-49)を除いて-11〜-23、低群で-39〜-66、もち群で-81〜-93と負で、この値もアミロース含量タイプの判別指標の一つに利用できる(表1)。
4. ブラベンダー製粉に比べて製粉操作がより簡便な全粒粉を用い、BDとSBとを指標にして、各アミロース含量タイプ群を区分することができる。さらに、SB/BD比を併用することにより、低アミロース群とやや低アミロース群の区分がより明確となる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 比色法によるアミロース含量の分析では、通常アミロース群とやや低アミロース群を明確に区別することできない場合がある(表1)。糊化特性値を用いる本手法では、コムギ育成系統の各アミロース含量タイプをより確実に判別できる。
2. 供試した低アミロース品種系統群は全てWx-A1及びWx-B1欠失型、やや低アミロース群は全てWx-B1欠失型である。他の遺伝子型は未検討である。
3. Wx座の遺伝子型既知の品種を基準として、育成系統の遺伝子型推定が可能である(図2)。
4. 刈遅れによる糊化特性の変化を回避するため、成熟期にサンプリングした試料を用いる。
5. 「きぬの波」を交配親に用いた後代系統への本手法の適用性については未検討である。
6. Wx座が未固定の材料では、中間的な糊化特性を示す。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:温暖地多湿水田輪換畑向き早生良質小麦品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:藤井 潔、辻 孝子、吉田朋史
1)藤井ら(2003)育種学研究 5(別1):164.
2)藤井ら(2003)育種学研究 5(別2):355.

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