ビール大麦の穀粒SKCS硬度による極高ジアスターゼ系統の選抜


[要約]
ジアスターゼ力が600WK/TNを超える極高ジアスターゼ系統は穀粒SKCS硬度が特異的に高い。極高ジアスターゼ系統は麦芽エキスが平均1%低くなるが、麦芽エキスが83%程度の「極高ジアスターゼ・高エキス系統」は選抜できる。

[キーワード]二条オオムギ、ビール麦、ジアスターゼ力、SKCS、硬度、醸造品質

[担当]栃木農試・栃木分場・品質指定
[連絡先]電話0727-27-2711
[区分]作物・冬作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 麦芽の澱粉分解能力の指標となるジアスターゼ力(DP)の向上はビール麦の品質育種目標の一つである。とくに発泡酒用には副原料の澱粉成分を分解する能力が高い極高DP品種が適していると考えられる。高リジン裸麦系統「四R系1363」に由来する系統のなかには通常品種のおよそ3倍の600WK/TNを超えるDPを有する極高DP系統がみられる。そこで極高DP系統の効率的な選抜を行うために、小麦の品質育種で用いられている穀粒硬度計SKCS4100(Single Kernel Characterization System) を用いた極高DP系統の簡易選抜法を開発する。また極高DP特性が麦芽エキスなどに及ぼす品質多面効果の解析を行い、高品質極高DP系統を選抜するためのポイントを明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 四R系1363(=高リジン遺伝子lys1を有する)に由来する36系統のなかで、DPが600 WK/TN以上の極高DP系統は特異的に高い原麦SKCS硬度を示す(図1)。すなわち原麦硬度が高い系統を選抜することにより、極高DP系統の効率的な選抜ができる。
2. ただし、原麦硬度は麦芽エキスと負の相関(r=-0.50**)を有する(表1)。DPが600WK/TNを超える系統の平均麦芽エキスはそれ以下の系統の平均よりも1%低い(表2)。しかし、麦芽エキスが83%をこえる「高エキス・極高DP系統」も存在し(図2)、極高DP特性と高麦芽エキス特性は育種的に組み合わせることが出来る。
3. その他の醸造品質特性(麦芽粗蛋白含量、可溶性窒素、コールバッハ数、麦汁β−グルカン)については、極高DP系統群はDP値の低い系統群と同様の平均値を示す(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. DPが350 WK/TN以下の通常の材料を用いた試験ではDPと原麦SKCS硬度の相関(r=0.35*)は低い。したがって、原麦硬度によるDPの選抜はlys1遺伝子が関わる極高DP系統を親とする組み合わせ以外では有効性が低い。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ビール醸造用極高品質中間母本の育成
予算区分:指定試験
研究期間:2003年度
研究担当者:長嶺敬、関和孝博、山口恵美子、渡邊修孝

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