下総台地の黒ボク土畑下層における硝酸態窒素濃度の実態


[要約]
常総層上部の土壌溶液中の硝酸態窒素濃度は、畑作物畑では平均が7mgL-1、野菜畑では平均が32 mgL-1である。硝酸態窒素濃度は1m以下の下層において30〜40%減少すると推測される。

[キーワード]下総台地、黒ボク土、硝酸態窒素、塩化物イオン、環境負荷

[担当]千葉農総研・生産環境部・土壌環境研究室
[連絡先]電話043-291-9990
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 野菜栽培が盛んな下総台地は厚さ2.5〜5mの関東ローム層で覆われ、その最下部に透水性が非常に低い常総層が存在する。常総層上部には宙水が発生するが、農地の浸透水は、この深さまではほ場外の浸透水の影響をほとんど受けないと判断される。そこで、農地から流出する硝酸態窒素量を評価するために、畑作物や野菜が栽培されているほ場において、常総層が出現する深さ4mまでの硝酸態窒素濃度の実態を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 調査対象ほ場は、ラッカセイ、ムギ、カンショ栽培の畑作物畑5か所、キャベツ、ダイコン、スイカ、ニンジン栽培などの野菜畑8ヶ所、牛ふん尿が施用されている飼料畑1ヶ所の合計14か所である。このうち6ほ場において、深さ2.25〜4mに常総層が確認された。
2. 野菜との輪作であるEを除いた、畑作物が主に栽培されている畑作物畑では、常総層直上部あるいは3.75〜4m(調査最下層)の土壌溶液中の硝酸態窒素濃度は1〜16 mgL-1であり、平均が7 mgL-1である(表1)。野菜畑では、同様の深さ(常総層上部とする)の硝酸態窒素濃度は、最低が6 mgL-1、最高が74 mgL-1でほ場間の差が大きく、平均が32 mgL-1である。飼料畑では、54 mgL-1である。
3. 硝酸態窒素濃度は、上層に比べて下層が低い傾向がある。1〜1.25mの深さの硝酸態窒素濃度に対する常総層上部の硝酸態窒素濃度の比は0.2〜2.7であり、最低値0.2と最高値2.7を除いた平均が0.64である(表2)。
4. 塩化物イオンは脱窒や有機化で減少しないが、1〜1.25mの深さに対する常総層上部の塩化物イオン濃度の比は、最高値と最低値を除いた平均が1.39であり、下層が低い傾向はない。1〜1.25mの硝酸態窒素濃度と塩化物イオン濃度の比に対する常総層上部の硝酸態窒素と塩化物比は0〜3.6であり、最低値と最高値を除いた平均が0.60である(表3)。
5. 以上から、下総台地の畑作物畑の浸透水は、地下水の硝酸態窒素濃度が環境基準値を超えるような負荷はほとんど起こしていないと判断される。一方、野菜畑では、窒素収支の状況によっては、環境基準値を超える負荷を与えている可能性がある。常総層上部の硝酸態窒素濃度比及び硝酸態窒素/塩化物比から、硝酸態窒素濃度は1m以下の下層において30〜40%減少すると推測される。

[成果の活用面・留意点]
環境負荷を低減する施肥管理対策を立案する上での基礎資料とする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:土壌中の硝酸態窒素の長期的動態解明
予算区分:土壌保全
研究期間:1999〜2002年度
研究担当者:八槇 敦、安西徹郎

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