電撃式自動カウントフェロモントラップの計数精度向上


[要約]
市販の電撃式自動カウントフェロモントラップの計数方式を電撃電圧降下方式から赤外線方式に変更し、ハスモンヨトウの活動時間や季節に応じてトラップの各種設定時間を調整することにより、計数精度が向上する。

[キーワード]フェロモントラップ、発生予察、自動計測、電撃式、ハスモンヨトウ

[担当]埼玉農総研・生産環境担当
[連絡先]電話048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、誘殺数を自動でカウントするフェロモントラップが開発・販売されはじめた。誘引された蛾は電撃により捕獲されるので、捕獲数は従来のファネルトラップと同等であるが、捕獲虫の計数精度は低い。そこで、トラップの計数方式の変更や作動時間等の設定変更により実用的精度のレベルまで計数精度を高める。

[成果の内容・特徴]
1. 市販の電撃式自動カウントフェロモントラップ(チヨダサイエンス社製)の計数方式は電撃電圧降下方式(捕獲された蛾が櫛形電極に落下し、電極間の電圧が降下することにより計数する方式)である。ハスモンヨトウを対象とした場合、この方式では鱗毛がセンサーに大量に付着するため誤計数が多い(図1)。とくに湿度の高いときには極端に計数値が多くなる。したがって、本種の計数方式としては実用的でない。
2. 計数方式を赤外線計数方式(誘殺された蛾が赤外線を遮断することにより計数する方式)への変更により、捕獲数と計数値の1日当たりの差は全体の約80%が±5以内になる(図2)。また、50以上の極端な計数誤差はなくなる。
3. 赤外線計数方式で誤カウントが生じる原因は、目的虫以外の虫の侵入と、捕獲された虫がセンサーに複数回計数されるためである。したがって、測定開始時間と測定終了時間のパラメータをハスモンヨトウの飛翔時間を参考に月1回変更すると誤カウントが少なくなる。また、計測不反応時間(センサーが反応して1カウントとして計測してから、次にセンサーが反応しても1カウントとして計測しない計測遅延時間)パラメーターの間隔は、捕獲数の少ない時期や場所(1日当たり捕獲数30頭程度以下)では長くし、捕獲数の多い時期や場所(1日当たり捕獲数30頭程度以上)では短く設定すると誤カウントが少なくなる(図2)。
4. 赤外線計数方式は気象的な影響を受けにくいため、捕獲数と計数値は直線の関係になる(図3)。
5. トラップの稼働時間や計測不反応時間の設定を月別に変更する際の熊谷での基準をとりまとめた(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 赤外線計数方式の感度は自動調整になっているが、精度維持のためセンサー部分のクリーニングを年1回程度行う必要がある。
2. トラップの発注時にメーカーに注文すれば計数方式を変更できる。
3. 購入済みの電撃電圧降下方式トラップを赤外線計数方式に改造する場合は、メーカー修理となるが、測定プログラム等の変更は必要ない。
4. ハスモンヨトウ以外の害虫へのトラップの適応性については、別途検討する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:害虫侵略最前線情報提供システムの開発
課題ID:
予算区分:県単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:加藤徹、根岸進、江村薫、高谷学(株・日伸理化)、田中高広(同)

目次へ戻る