小型ボイラーを用いた熱水によるトルコギキョウ土壌病害虫の防除


[要約]
家庭用小型ボイラーと点滴かん水チューブを用いて夏季に75℃の熱水を点滴かん水する消毒法は、トルコギキョウの根腐病、青かび根腐病及びネコブセンチュウ類に対して防除効果が高い。

[キーワード]小型ボイラー、熱水、土壌消毒、トルコギキョウ、土壌病害虫、防除

[担当]茨城農総セ・園研・病虫研究室
[連絡先]電話0299-45-8342
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 県内のトルコギキョウ栽培では、栽培中に株がしおれる「立枯症」が発生する。「立枯症」は根腐病、青かび根腐病、ネコブセンチュウ類などの土壌病害虫が原因であるが、大型ハウスでは周年出荷を行うために各種作型が混在しており、ハウス全面をあけて太陽熱土壌消毒や土壌くん蒸剤による消毒を行うことは難しい。そこで、小面積での土壌病害虫対策として、家庭用小型ボイラーと点滴かん水チューブを用いた熱水土壌消毒による防除法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 熱水土壌消毒は、熱出力が36.0kW〜52.3kWの家庭用小型ボイラー(N社製:図1)を用いて、75℃の熱水を土壌中に点滴かん水する方法で行う。この方法は、従来の約95℃の熱水を使用する方法に比べ、機械代が約1/10と低廉で、操作も簡易である。
2. 熱水の土壌中への供給は、地表面にかん水チューブ(P社製20ピッチチューブ)を40〜60cm間隔に設置した後、ビニールで被覆してハウスを密閉し、75℃の熱水の点滴かん水により行う(図1)。
3. 家庭用小型ボイラーとかん水チューブは、耐熱性塩ビ管とかん水チューブ用コネクターでつなぐ。
4. 熱水の処理量は200〜250l/m2程度であるが、深さ30cmの地温が45℃に達することを目安とする。火山灰土壌の圃場において、梅雨明け後の夏季に、熱水を250l/m2となるように点滴かん水した時の地温は、深さ10cm及び30cmともに45℃以上を連続5日以上持続する。さらに、深さ50cmでも40℃以上を連続5日以上持続する(図2)。
5. 1回の処理面積は約100m2であり、処理時間は約48時間である。
6. 熱水土壌消毒処理後、トルコギキョウ品種「マイテ・レディ」と「ネイル・マリン・ネオ」の生育は、ダゾメット粉粒剤処理と同等である(表1)。
7. 熱水土壌消毒処理は、根腐病、青かび根腐病、ネコブセンチュウ類に高い防除効果がある。また、熱水土壌消毒処理は、ダゾメット粉粒剤処理よりもネコブセンチュウ類に対する防除効果が優る(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 原水の水質が悪い場合は、フィルターでろ過する。
2. ハウス内周縁部は地温の上昇が不十分であるため、周縁部へもかん水チューブを設置する。また、ビニールはできる限り被覆をしておき、地温の低下を防止する。
3. 作物を作付中のハウス内においても、本消毒法は実施可能である。
4. 本消毒法は、他の花き類の土壌病害虫にも適用できる。
5. 灯油代(50円/lとした場合)は、100m2を処理すると約13,000円である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新規導入花き類の病害の診断法の開発
予算区分:県単
研究期間:1994〜2003年度
研究担当者:冨田恭範、小河原孝司、市村勉、長塚久
発表論文等:
1)特許申請「土壌病虫害の防除方法及び防除装置」特願2003-311930号

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