水稲「北海188号」の葉いもち圃場抵抗性に関与する新遺伝子Pi35(t)


[要約]
水稲「北海188号」の葉いもち圃場抵抗性には作用力の強い1個の新遺伝子Pi35(t)が関与している。本遺伝子は第1染色体上のDNAマーカーRM1216近傍(3.5cM)に座乗している。

[キーワード]水稲、「北海188号」、葉いもち圃場抵抗性、QTL解析、遺伝子Pi35(t)

[担当]中央農研・病害防除部・糸状菌病害研究室
[連絡先]電話029-838-8940
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)、共通基盤・病害虫(病害)、作物・稲
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 水稲系統「北海188号」の強い葉いもち圃場抵抗性は、1個の優性遺伝子により支配されている可能性がある(三上ら, 1990)。しかし、「北海188号」を用いた葉いもち圃場抵抗性の遺伝解析はまだ行われていない。そこで、抵抗性品種の効率的な育成を図るため、「北海188号」の強い葉いもち圃場抵抗性のQTL(Quantitive Trait Loci:量的形質遺伝子座)解析を行い、その数や染色体上の位置を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 水稲系統「北海188号」のいもち病に対する真性抵抗性遺伝子型は+と推定され、本系統は葉いもち圃場抵抗性極強水稲品種「銀河」以上の抵抗性を有する。
2. 葉いもち圃場抵抗性弱のインディカ型水稲品種「Danghang-Shali」と「北海188号」を交配して得られたF3系統の葉いもち圃場抵抗性は「Danghang-Shali」と同程度のものを弱、そうでないものを強とすると、強と弱が3:1に分離する(図1、カイ二乗値0.017、P値0.95)。
3. 「Danghang-Shali」と「北海188号」のF2集団で連鎖地図を作成し、これとF3系統の葉いもち発病程度をもとにQTL解析したところ、第1と第8染色体上に本圃場抵抗性に関与する2個のQTLが検出される(図2)。
4. これらのQTLうち、第1染色体上DNAマーカーRM1216近傍(3.5cM)の「北海188号」由来のQTLは作用力が非常に強い(表1図1)。また、第8染色体上のQTL(RM6999近傍)は作用力が小さく、「Danghang-Shali」に由来する(表1)。これはRM1216近傍のQTLが「北海188号」の強い葉いもち圃場抵抗性に関与していることを示す。
5. 第1染色体上にいもち病圃場抵抗性に関与する作用力の強い遺伝子の報告はない。そこで、この遺伝子を新たにPi35(t)と命名する。

[成果の活用面・留意点]
 DNAマーカーを用いたいもち病抵抗性イネ品種の効率的育成の基礎となる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:イネいもち病圃場抵抗性の簡易・高精度DNAマーカの作出と効率的品種育成のための同質遺伝子系統育成
課題ID:03-07-01-01-21-04
予算区分:DNAマーカー
研究期間:2004年度
研究担当者:小泉信三、ニュエン・ティタン・ツィ、ラ・トァン・ニャ(ベトナム農遺伝研)、善林 薫(東北農研セ)、芦澤武人(東北農研セ)、安田伸子、井上伊織、宮坂 篤

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