北陸地域を対象とした早生水稲の高温登熟性検定基準品種の選定


[要約]
北陸地域における極早生〜早生熟期の水稲品種・系統の高温登熟性検定のために、「てんたかく」を“強”、「ハナエチゼン」を“やや強”、「あきたこまち」、「ひとめぼれ」を“中”、「新潟早生」を“弱”の基準品種とする。

[キーワード]水稲、基準品種、高温登熟、北陸地域

[担当]中央農研・北陸地域基盤研究部・稲育種研究室
[連絡先]電話025-526-3239
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、作物・稲
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 北陸地域では出穂後の高温ストレスによる玄米の外観品質の低下が問題となっており、高温下における登熟性の改良は水稲育種における重要な課題の一つである。高温登熟性による選抜や検定のためには、基準となる品種が不可欠であるが、北陸地域を対象とした基準品種は策定されていない。そこで,北陸地域の新潟県農業総合研究所作物研究センター(新潟県長岡市)、富山県農業技術センター(富山県富山市)、石川県農業総合研究センター(石川県金沢市)、福井県農業試験場(福井県福井市)および中央農研・北陸研究センター(新潟県上越市)において2002年、2004年に高温登熟性について調査した結果から、北陸地域を対象とした水稲の高温登熟性検定基準品種の選定を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 高温になる時期が年次および試験地により異なることから、温度を管理できる人工気象室、温水かけ流しおよび温水プールの結果をもとに品種の順位を策定した。さらに、温度管理が困難なビニールハウスを用いた圃場検定によって品種の順位の異同を検討し、基準品種を選定した(表1)。
2. 高温登熟性検定基準品種として、「てんたかく」を“強”、「ハナエチゼン」を“やや強”、「あきたこまち」、「ひとめぼれ」を“中”とする。また、温度を管理できる試験の結果から、「新潟早生」を暫定的に“弱”とする(表2)。
3. 中生の「コシヒカリ」については極早生・早生品種と比較すると“やや弱”に相当すると思われるが、中生熟期の他品種との比較を行っていないため、参考品種とする(表2)。
4. 極早生〜早生熟期の品種の分散分析の結果では、品種間に5%水準で有意な差異が認められたが、場所間では有意な差は認められなかった(表3)。
5. 農研機構および水稲育種指定試験地の高温登熟性特性検定試験地である鹿児島県農業試験場に依頼して、選定した北陸地域の基準品種を基背白粒歩合によって高温登熟性の検定を行ったところ判定は異なるが順位は一致した結果が得られる(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本基準品種の適用対象地域は、北陸地域である。
2. 基準品種の出穂期は場所によって多少異なるため、検定系統と同じ出穂期の基準品種を用いて判定する必要がある。
3. 「新潟早生」はビニールハウスを用いた圃場検定での評価が異なるため、暫定的に"弱“とし今後さらに検討する。
4. ビニールハウスを用いた圃場検定は多数の材料を用いた大規模な選抜を行う場合は有利であるが、“弱”の評価が難しい可能性がある点に留意する。
5. 基準品種の見直し、追加は必要に応じて行い、中生品種についても基準を選定する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:寒冷地南部向き水稲品種の育成及び選抜法の開発
課題ID:03-12-01-01-04-04
予算区分:交付金
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:笹原英樹、三浦清之、後藤明俊、重宗明子、石崎和彦(新潟農総研)、表野元保(富山農技セ)、小島洋一朗(富山農技セ)、中村啓二(石川農総研)、永畠秀樹(石川農総研)、田野井真(福井農試)、小牧有三(鹿児島農試)
発表論文等:小牧ら(2002)北陸作物学会報37:12-16
      表野ら(2003)北陸作物学会報38:12-14.
      永畠・黒田(2004)北陸作物学会報39:81-84. 他4編

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