飼料用水稲「クサユタカ」「夢あおば」の直播での窒素施用量と苗立密度


[要約]
「クサユタカ」と「夢あおば」の湛水散播直播での地上部多収に必要な総窒素施用量は5月上旬播種で7〜9kg/10a、6月中旬播種で4〜5kg/10aである。落水不良の場合、低節位分げつが休眠し大きく減収するので苗立密度は70本/m2以上必要で、最多収量は120〜160本/m2で得られる。

[キーワード]稲発酵粗飼料、飼料イネ、クサユタカ、夢あおば、施肥、苗立、分げつ

[担当]中央農研・北陸水田利用部・栽培生理研究室
[連絡先]電話025-526-3241
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、北陸・総合研究、作物・稲、共通基盤・総合研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 総合的自給率拡大対策の一環として稲発酵粗飼料生産の定着と拡大が求められているが、そのためには直播等低コスト生産での安定多収栽培法の構築が必要である。また、近年育成されている稲発酵粗飼料向き品種は、品種特性からみて栽培基準が食用品種と異なるものが多い。そこで、「クサユタカ」と「夢あおば」について、湛水直播栽培で多収を得るための基本となる必要総窒素施用量並びに適正な苗立密度を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「クサユタカ」、「夢あおば」とも北陸地域での標準的な5月上中旬の播種期では、7〜9kg/10aの総窒素施用量で地上部乾物収量の多収を得ることができる(図1)。11kg/10aでは倒伏のおそれがある。基肥・中間追肥・後期追肥の配分を検討した結果、ほぼ均等配分である基肥−分げつ期−穂首分化期〜幼穂形成期に3kg−2〜3kg−2〜3kgの分施法が適する。
 6月中旬の晩播では「クサユタカ」、「夢あおば」とも4〜5kg/10aの総窒素施用量が適し(図2)、分施法は基肥と後期追肥計2回の均等配分が適し、基肥−分げつ期または穂首分化期に2〜3kg−2〜3kgとする。
2. 播種時に1〜2cmの湛水があり出芽〜1葉以上に達するまでの落水条件が充分確保できず、かつ入水後も完全落水部分より深水条件となる場合、低節位の分げつが休眠しやすくなる(図3)。この傾向はとくに2,3号分げつで顕著である。1号分げつは湛水直播の一般傾向と同様にすべて休眠する。
3. 多収のために必要な苗立密度水準は約70本/m2以上であり、120〜160本/m2で最多収量が得られる(図4)。30本/m2等の低苗立密度では、播種後の落水条件が充分確保できず入水後に深水条件となる場合、低節位分げつが休眠して穂数不足となり大幅に収量が低下する。

[成果の活用面・留意点]
1. 「クサユタカ」「夢あおば」を用いた稲発酵粗飼料の湛水散播直播に適用する。
2. 本成果は細粒グライ土壌での酸素発生剤無粉衣の落水散播直播法で得た結果による。
3. 地上部乾物収量は黄熟期に地際刈りし機械乾燥した乾物重である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ホールクロップサイレージ向け飼料用イネ品種の最適栽培管理法の開発
課題ID:03-11-01-02-18-04
予算区分:交付金プロ(北陸大麦飼料用稲輪作)
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:松村修、山口弘道、千葉雅大

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