Rhizoctonia solani AG-2-2IIIBに起因するダイズリゾクトニア根腐病と有効薬剤


[要約]
播種3〜4週間目頃のダイズにおける下葉の黄化や胚軸部の褐変、著しい根腐れ症状による生育不良はRhizoctonia solani AG-2-2IIIBによって発生することが見出された。本病に対し、モンカットおよびメプロニルの薬剤の種子粉衣で防除効果がある。

[キーワード]ダイズ、生育不良、根腐れ、Rhizoctonia solani AG2-2IIIB、薬剤防除

[担当]富山農技セ・農業試験場・病理昆虫課
[連絡先]電話076-429-5249
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、富山県内の数か所のダイズ生産地で、播種後の発芽・苗立ちは比較的良好であるが、播種3〜4週間目頃の6月下旬から7月上旬にかけて、生育不良で根腐症状を呈する圃場が見られ、問題化している。これは播種後初期に発生することが多い茎疫病や苗立枯症状とは明らかに異なる様相で、その原因究明が急務である。そこで、病原の特定とともに病原菌の特性や防除対策を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 本病は下葉の黄化や胚軸部の褐変とともに著しい根腐れ症状を呈し、その後病勢は徐々に進行し、細根が脱落して茎部に気根を認めるものもある(図1)。発生様相は坪状または散発的で、全体の3割程度が枯死して欠株となる圃場も見られる。
2. 罹病部から単一のRhizoctonia属菌が高率に分離され、分離菌を宿主に接種すると原病徴が再現され、接種菌が再分離される。
3. PDA培地上で本病菌の菌そうは茶褐色を呈して輪帯を生じ、生育適温は28℃付近で、35℃においても生育する (図2)。
4. 上記性状及び菌糸融合結果(表1)から、本病原菌は菌糸融合群第2群2型(AG2-2)で、培養型IIIBに属する。
5. 本病原菌は、接種によりイネに擬似紋枯症を生じる(データ略)。
6. R.solani AG-2-2によるダイズリゾクトニア根腐病の報告はわが国で初めてであり、リゾクトニア根腐病の病原追加を提案している。
7. 本病に対し、フルトラニルとメプロニルの2剤は種子粉衣処理で防除効果がある(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. フルトラニルとメプロニルの両剤は「作物指定無し、豆類」としてリゾクトニアによる苗立枯病等を対象に農薬登録がある。
2. 本病原菌はダイズに加えてイネにも寄生性を有することから、水稲との輪作体系における菌の残存に留意する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ダイズにおける立枯性病害の原因究明と防除対策試験
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:向畠博行、百町満朗(岐阜大学)、梅沢順子

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