塩酸抽出・ICP発光法による農耕地土壌中カドミウムのプロセス定量分析


[要約]
土壌汚染対策法に基づく方法に準じ、供試土壌1gを1molL-1塩酸20gで抽出し、上澄液をICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析法)の波長228nmで測定することにより、作物体と同様にカドミウム濃度(Cd50ngg-1以上)の迅速定量分析ができる。

[キーワード]カドミウム、農耕地土壌、塩酸抽出、ICP-OES法、

[担当]中央農研・北陸水田利用部・土壌管理研究室
[連絡先]電話025-526-3244
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 Codex委員会では、農作物中カドミウム濃度の規制値が論議されており、多数検体の農耕地土壌を定量分析する手法が必要になってくる。しかし、従来のカドミウム定量分析法は、加熱酸分解・有機溶媒抽出、原子吸光分析法が主で、作業能率が劣り熟練を要する。また各種無機酸や有機溶媒を使用するので分析作業者への被曝、実験廃ガスや廃液の処理も無視できない。このような試料液調製をせず、大量の検体数を迅速・簡便に処理するため、土壌汚染対策法に基づく方法に準じ、作物体(平成9年度、平成14年度)と同様に、農耕地土壌適用できるプロセス定量分析法(本法)を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 本法は、作物体と同様に、調製した農耕地土壌1.00gに1molL-1塩酸20.0gを分注器(重量法で検定済み)で添加、室温で約1時間振り混ぜ抽出、固液層が分離するまで静置。上澄液を乾燥濾紙で濾過し、濾液をAxial型ICP-OES装置に導入し波長228nmで測定する(図1)。
2. 土壌中の定量分析は測定波長の選定が重要である。土壌型7種類を用い、土壌汚染対策法により試料液を調製し、日本工業規格K0102により農耕地土壌中カドミウムを定量分析すると、測定波長214nmは鉄マトリックスの影響を受け、カドミウム測定値は高濃度になる。測定波長228nmは鉄の影響を受けにくいため、試料液を直接Axial型ICP-OES装置に測定しても、有機溶媒抽出をして除鉄した測定値と良く合う(表1)。
3. 本法の定量分析値(図1表2)と、土壌汚染対策法により試料液を調製し試料液を直接Axial型OES・ICP装置に導入し測定波長228nmで得た値(表1)を比較すると、農耕地土壌中カドミウムのプロセス定量分析に十分活用できる程度に、良く合う値が得られる。
4. 本法の分析操作は約100検体を処理する場合、試料液調製から測定まで、分析作業者1名、1日約6時間労働とし、約2日間の所要時間でできる。また、高度な化学分析技能は必要なく、加熱酸分解等を行わないのでドラフト等の化学実験室は必要ないが、換気のよい分析作業室が必要である。
5. 本法は、従来法に比較し迅速・簡便なプロセス定量分析法であり、農耕地土壌中カドミウム濃度の圃場・農業生産団地の選別予備調査ができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 塩酸抽出の定量限界は、AASで直接測定:300〜500ngg-1、溶媒抽出:150ngg-1である。Stat・AASは100〜200ngg-1で、Radial型ICP-OESはCd100〜250ngg-1である。
2. なお、本法はプロセス定量分析値であり、公的デ−タは別途定量分析する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:粘土質水田の転換畑化に伴う主要無機成分の動態解明
課題ID:03-11-04-01-06-04
予算区分:交付金
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:中島秀治、関口哲生、亀川健一

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