高齢化に対応したイチゴ高設栽培軽作業化のための作業・運搬台車


[要約]
イチゴ高設栽培の軽作業化のための作業用移動台車及び収穫物資材等の運搬台車を開発した。作業者は、座って作業できるため、長時間の立ち姿勢の疲労が軽減され、高齢者でも作業可能である。

[キーワード]高齢化、イチゴ、高設栽培、作業台車、運搬台車

[担当]三重科技・農業研究部・経営・植物工学グループ
[代表連絡先]電話0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 本県イチゴ栽培農家は高齢化が進み、面積も最盛期の約40%まで減少している。栽培方法は、姿勢改善効果のある高設栽培へと移行しつつあるが、高設栽培といえども長時間の立ち姿勢が高齢者にとっては苦痛であり、さらに軽作業化を求める要望は強い。そこで、長期間にわたる収穫、株管理等の作業を座ってできる栽培システムを確立するための作業・移動、運搬方法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 座ったままの姿勢で作業・移動するため通路幅を1mに、ベッド上部までの高さを90cmとする。通路の両側にベッドの支柱及び固定金具を使ってパイプハウス用の直管(直径22mm)を幅85cmの間隔で敷設し、レールとして使用する(図1)。
2. 作業は台車に取り付けた椅子に座って地面を蹴って移動しながら行う。作業台車は、アルミ製のH型フレームの中央に椅子を配置し、レールの有無にかかわらず使用できる構造である(図2-1)。椅子は、作業位置、身長差にあわせて座面の高さが23cmの範囲で調整でき、ベッドとの距離を調整するため前後方向にも9cmスライド可能である。椅子は、中心軸の開放と締め付けにより、回転、固定が選択できる(表1)。
3. 運搬台車は、主として収穫時の容器や収穫物を運搬するために、作業台車に連結して牽引する方式である。生育が進むとイチゴの果梗が伸びて収穫位置が下がること、1回の収穫量がピーク時には10箱程度となることから運搬台車の荷台を低くして容器を置くスペースを確保している(図2-2,4)。
4. 通路間(レール)の移動は、座席の回転を止め、背もたれ肘掛けをハンドル代わりに次のレールまで移動させる。レールの端を傾斜させておくと地面とレールの移動が容易に行える(図2-3)。移動のためのベッド端の通路幅は約2mである。
5. 作業手順は、レールに台車をのせ座席の位置を決めて固定する。収穫作業では収穫容器をのせた運搬台車を作業台車に連結して作業を開始する。1通路分の収穫を終えたら運搬台車の連結をはずし収穫物をハウス入り口まで運び、空の容器を運搬台車に積んで次の収穫場所に移動する(図2-4)。
6. 収穫作業時間は、歩行による高設栽培と同程度であるが、広背筋(腰)にかかる負担が軽減され、軽作業化につながる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 土耕から高設への切り替え時、高設栽培の更新時に導入でき、コストは、ベッド、培地、作業台車、給液装置を含めて240万円/10aである。
2. 通路の中央部は、レールを敷設した状態で約70cm確保されるため、通行に支障はない。
3. ベッド端の通路は、ビニール被覆後は雨等が入らないため地ならしをしておくだけで特に地面の改良の必要はない。また、通路間隔を広げても両端のベッド外側の通路間隔を狭くし、イチゴを内側に成らせることで、ベッド数は慣行と同じにできる。さらにジベレリン処理等の栽培技術を併用することで収量は慣行と同程度確保できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:高齢者・障害者に対応した園芸福祉のためのバリアフリー農作業システムの開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:中西幸峰、田中一久、新木隆史(工研部)、松岡敏生(工研部)、安田府佐雄((株)三恵工業)
発表論文等:「走行型作業椅子及びそれを用いた高設栽培ハウス」(特願2005-311859)

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