高水分コムギのコンバイン収穫時における粉色劣化の低減策


[要約]
水分30-40%程度の高水分コムギを自脱コンバインで収穫する場合、こぎ胴回転数を10%程度低くし、作業速度を落さないことが粉色劣化低減につながる。また、収穫方式では自脱コンバインより普通コンバインの方が粉色劣化程度は低い。

[キーワード]高水分コムギ、コンバイン、こぎ胴回転数、作業速度、粉色、RVA

[担当]中央農研・作業技術研究部・施設利用研究室
[代表連絡先]電話029-838-8815
[区分]関東東海北陸農業・作業技術、関東東海・水田畑作物(冬作物)、共通基盤・作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 国内産コムギは収穫時期が梅雨と重なることが多く、降雨による品質低下を避けるために平均水分が30%を超える高水分状態で収穫される場合も多い。しかし、高水分コムギは収穫時の損傷や乾燥調製処理の困難さから品質劣化等の問題を起こし易く、実需者からも粉色、デンプン品質等の問題から敬遠される傾向があり、品質の改善が求められている。
 そこで、高水分コムギ収穫時において損傷を減らし品質劣化を低減するため、コンバインの作業条件について検討を行い、作業指針を策定する。

[成果の内容・特徴]
1. 自脱コンバインにて穀粒水分30-40%の高水分コムギを収穫する場合、こぎ胴回転を標準より10%程度低く設定(エンジン回転数にて調節)することで粉色の明るさの指標であるL*値が向上する(図1(c) I ,III)。また、作業速度を40%程度低く設定した場合、L*値は低下する(図1(c) I ,II)。つまり、こぎ胴回転数を低く設定することはこぎ歯先端速度を下げ、作業速度を落さないことは、膨軟な穀粒のこぎ胴内での滞留時間を短くできるため、こぎ歯による打撃によるダメージが抑えられ粉色劣化が低減する。
2. 普通コンバインにて穀粒水分30-40%の高水分コムギを収穫する場合,こぎ胴回転数を標準より10%程度低く設定(エンジン回転数にて調節)しても、粉色の明るさの指標であるL*に明確な改善は認められず(図2(c) I ,III)、また、作業速度を50%にしてもL*の明確な低下は認められない(図2(c) I ,II)。
3. 穀粒水分30-40%の高水分コムギの収穫では、普通コンバイン収穫の方が自脱コンバイン収穫よりL*値を高く保持できる(図2(c))。
4. 穀粒水分30-40%程度の高水分コムギを自脱コンバイン収穫する場合、こぎ胴回転を標準より10%程度低く設定することおよび作業速度を40%程度低くすることはデンプン品質の指標であるRVAピーク値に明確な影響を与えない(図1(b))。また、普通コンバイン収穫の場合は、こぎ胴回転数を標準より10%程度低く設定することおよび作業速度を50%程度とすることはRVAピーク値に明確な影響を与えず、また、自脱コンバイン、普通コンバインの別はRVAピーク値へ影響を与えない(図2(b))。

[成果の活用面・留意点]
1. 本技術はコムギ成熟期に連続した降雨が見込まれ、やむをえず高水分で早刈(適期3-5日前)する場合に適用できる。
2. 降雨直後は粒が膨軟化しており、打撃によるダメージを受けやすく粉色の大幅な劣化につながり(図1(c)出穂後54日目を参照)、不適切である。
3. 穀粒水分40%以上では、穀粒の未成熟、1〜5%以上の損傷率、コンバイン作業時の詰り等が生じるため収穫は不適切である。
4. 雨濡れや倒伏がある場合には、低こぎ胴回転数設定および通常の作業速度による収穫では、コンバインの詰りが生じる可能性があり、不適切である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:高水分小麦の高品質収穫調製作業技術の開発
課題ID:03-10-03-01-01-05
予算区分:交付金、ブラニチ1系
研究期間:2002〜2005年度
研究担当者:金井源太、玉城勝彦、長崎裕司(農水省)
発表論文等: 金井ら(2005)農機学会誌67(3):96-105
金井ら(2006)農機学会誌68(1):87-95

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