暑熱対策時期の判定と通風等による乳牛ストレスの緩和


[要約]
体感温度を暑熱ストレス指標とした場合、北陸地域での暑熱対策実施時期は、体感温度18℃を越える5月下旬から10月上旬であり、対策の早期化と期間の延長が必要である。また、1.5m/s以上の通風による対策が効果的であり、高温時の細霧装置は送風との組合せにより、呼吸数の増加抑制に十分な効果を発揮する。

[キーワード]乳牛、体感温度、呼吸数、暑熱対策、風速、細霧

[担当]富山畜試・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 暑熱時の乳牛の損耗や乳量の減少は、酪農経営にとって大きな課題である。このため、大型送風機の利用やエネルギーの増給など、様々な対策が取られているが、繁殖障害等の被害は減少していない。この原因として、暑熱対策が人間の感覚によって実施されるため、乳牛の暑熱感受時期と暑熱対策実施時期にずれが生じていること、実施されている対策が期待される効果を上げていないこと、等が考えられる。
 このため、Bianka(1962)が提唱した牛の体感温度(0.35×乾球温度+0.65×湿球温度)を暑熱ストレスの指標として用い、実際の暑熱対策必要時期の判定及び効果的な暑熱対策方法について検討を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 搾乳牛(ホルスタイン種)は、平常時25回前後の呼吸数が高温下で80回と約3倍の呼吸数となり、非常に強い暑熱ストレスを受けている(図1)。
2. 北陸地域の夏期は高温多湿環境下であるが、体感温度は暑熱ストレスの指標の一つである呼吸数と相関が高いことから、北陸地域においても暑熱ストレス指標として有効である(図1)。
3. 熱放散のために呼吸数が増加しはじめる変曲点は、およそ40回/分であり、その時の体感温度は18℃である(図1)。
4. 平均体感温度が18℃を越える5月下旬から10月上旬までが、北陸地域における暑熱対策実施時期であり、従来より実施時期の早期化が必要である(図2)。
5. 牛体に当たる風速が1.5m/s以上の場合、体感温度が24℃まで呼吸数の増加が抑えられ、暑熱ストレスの低減効果が見られる。反面、1.0m/s以下では、暑熱ストレス低減効果がほとんど見られない(図3)。
6. 細霧は乳牛の呼吸数を低下させ、暑熱ストレスの低減に有効である(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 北陸地域における暑熱対策の実施時期及び対策方法選定の参考となる。
2. 湿球温度計がなくても湿度計と相対湿度換算表により湿球温度を計算できる。また、細霧装置の利用においては、湿度上昇を防ぐため、高湿度時の稼働停止、噴霧と休止の組合せ等を行うことが必要となる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:酪農経営における暑熱対策の構築
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:山科一樹、高橋正樹、小山智鶴、紺博昭
発表論文等:山科ら(2005)北信越畜産学会報第92号:33-37

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