Gn-RH製剤併用による黒毛和種経産牛の効率的連続過剰排卵誘起処理


[要約]
分娩後の早い時期から連続過剰排卵誘起処理(SOV)を行うとき、各SOV開始60時間前にGn-RH製剤(酢酸フェルチレリン)を25μg投与すると、正常胚数および正常胚率が向上する傾向が見られる。

[キーワード]ウシ、過剰排卵誘起処理、Gn-RH、主席卵胞

[担当]群馬畜試・大家畜研究グループ
[代表連絡先]電話027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 過剰排卵誘起処理(SOV)開始時に主席卵胞が存在すると採卵成績に悪影響を与える。当場では平成16年度に採卵専用の黒毛和種牛の連続採卵で、正常胚数を向上させるためGn-RH製剤(酢酸フェルチレリン)を投与して主席卵胞の排卵を促した後、SOVを行なったところ良好な成績を得た。そこで、本法の効果を黒毛和種経産牛の分娩後早い時期からの連続SOVにおいて検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 供試牛には黒毛和種経産牛を用い、SOV開始60時間前にGn-RH製剤を投与する。試験区にはGn-RH製剤25μg投与区(10頭)、同50μg投与区(10頭)の2区を設定。両区とも分娩後50日よりSOVを35日間隔で連続3回行う。なお、分娩後50日目にSOVを実施するため、供試牛にはCIDRの2回留置およびポピドンヨード剤の頸管・子宮内注入をプログラムに従い実施する(図1)。対照区には供試牛の前産次の連続採卵成績を用いた。SOVの総FSH投与量は13AU(表1)である。統計処理は最小有意差法により行う。
2. 各区の平均回収卵数は25μg投与区10.8個、50μg投与区9.8個、対照区12.4個であり、各区間で有意差は認められない。
3. 各区の正常胚数と正常胚率(表2)は25μg投与区で7.9個、73.0%、50μg投与区で6.0個、61.2%、対照区で6.7個、54.5%となったが、各区間に有意差は認められなかった。
4. 回次別の正常胚数は、25μg投与区が7.9個、8.7個、6.9個で有意差は認められなかったが、他の区より向上する傾向が見られた(図2)。
5. 分娩後早期からの連続SOVにGn-RH製剤25μgを前投与すると、正常胚が増える傾向にある。

[成果の活用面・留意点]
1. 胚生産性が供胚牛の個体差に影響されることは免れない。
2. Gn-RH製剤の投与量が少量のため確実に投与することに留意する。
3. FSH低単位投与での結果であり、20AU以上の投与での効果は不明。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:牛の繁殖技術及び受胎性向上のための周辺技術の開発
予算区分:県 単
研究期間:2005年度
研究担当者:加藤 聡、宮崎 美伯

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