肉用牛へ給与する蒸煮した杉チップは粗飼料の代替となる


[要約]
蒸煮した杉チップの嗜好性はチモシー乾草やバミューダ乾草に比べて劣るが、濃厚飼料と混合して給与することにより、粗飼料の代替として利用できる。

[キーワード]肉用牛、杉チップ、粗飼料、嗜好性

[担当]群馬畜試・大家畜研究グループ
[代表連絡先]電話027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 木材の輸入自由化により国産材需要が低迷し、間伐材の利用が停滞したため、放置されて山林を荒廃させているケースが見受けられる。そうした中、杉を蒸煮し家畜飼料(以下杉飼料)とする製造技術が開発され、飼料化に成功する。間伐材が肉用牛の飼料として有効利用できれば、林業および畜産業に対する貢献も大きい。
 そこで、本県における利用推進のため、杉飼料の安全性と利用特性について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種雌牛2頭(B1・29カ月齢、B2・30カ月齢)、ホルスタイン種雌牛1頭(H♀・15カ月齢)およびホルスタイン種去勢牛1頭(H♂・16カ月齢)を用い試験を行う。
2. 嗜好性試験(キャフェテリア法)で、杉飼料はチモシー乾草やバミューダ乾草に比べ嗜好性が劣る(表1)。
3. 濃厚飼料を黒毛和種5kg/日、ホルスタイン種8kg/日に制限することにより、杉飼料を1日2kg程度は採食可能である(図1)。
4. 杉飼料を3カ月間給与しても、第一胃液pH(表2)、総原虫数(図2)および血液性状(尿素態窒素、総コレステロール、遊離脂肪酸、AST、GGT、カルシウム、マグネシウム、無機リン)は正常値の範囲内である。
5. 杉飼料を給与しても、ふんの臭気(アンモニア・臭い強度)は稲ワラ給与時と差はない。

[成果の活用面・留意点]
1. 杉飼料は肉用牛全般に活用できる。
2. 杉間伐材をチップに加工し、4気圧下で150℃から160℃で3時間蒸煮したものをすり潰して製造する。
3. 通常の粗飼料と違ってビタミンEやカロテンを含有していないので、その他の飼料構成に注意する。
4. 1日1頭あたりの給与量は2kgを上限とすることが好ましい。
5. 宮崎県の九州産業株式会社が製造したものを用いた。価格は55〜60円/kg(杉飼料40〜45円・運賃15円)である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:杉粗飼料緊急給与試験
予算区分:県単
研究期間:2005年度
研究担当者:浅田勉、赤岩香織、山田正幸、高橋朋子、宮田希和子、滝澤勝敏

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