施肥水準、収穫時期、品種の違いと飼料イネの成分や第一胃内消失率の関係


[要約]
飼料イネは成熟の進行に伴い、粗蛋白質、βカロテンは低下し、酸性デタージェント繊維、粗脂肪、ケイ酸は高まる。窒素施用量の増加に伴い粗蛋白質、βカロテンは高まり、ケイ酸は低下する。また、第一胃内における茎葉中の有機物消失率は、糊熟期から黄熟初期にかけて大きく低下する。

[キーワード]牛、稲発酵粗飼料、窒素施肥量、収穫時期、品種、第一胃、消失率

[担当]新潟畜産研・酪農肉牛科、新潟作物研・育種科
[代表連絡先]電話0256-46-3103
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 牛への稲発酵粗飼料の給与が進んでいるが、施肥条件、収穫時期、品種の違いによって含まれる成分に違いがあることは知られるものの、これらの相互関係を検討した情報は極めて少ない。そこで、窒素施肥量、収穫時期、品種の違いと飼料成分組成および第一胃内における消化性との関係を解明し、稲発酵粗飼料の牛用飼料としての特徴を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 飼料イネの飼料成分組成および第一胃内における茎葉の消化性に及ぼす窒素施用量(0、5、10kg/10a)、収穫時期(糊熟期、黄熟初期、黄熟後期)、品種(トドロキワセ、わせじまん、夢あおば)の影響を検討した。
2. 成熟が進むについれて、粗蛋白質(CP)、βカロテンは低下し、粗脂肪(EE)、酸性デタージェント繊維(ADF)、ケイ酸は増加する(表1)。
3. 夢あおばは、他の2品種に比べ穂割合が低いにもかかわらず、繊維が少なく、非繊維性炭水化物(NFC)が多く含まれる(表1)。
4. 窒素の施用量にの増加伴いCPとβカロテンは高まり、ケイ酸は低下する(表1)。
5. 第一胃内における茎葉中の有機物(OM)消失率は、糊熟期から黄熟初期までに急速に低下する(表2)。また、夢あおばは、他の2品種に比べ、中性デタージェント繊維(NDF)の消失率は低いものの、OM消失率が高い(表2)。なお、窒素の施用量による第一胃内の諸成分消失率への影響は小さい。
6. 立毛中の葉の葉色値を測定することで、βカロテンの推定が可能である()。

[成果の活用面・留意点]
1. 利用畜種別に、稲発酵粗飼料を生産するにあたっての品種選定、窒素施肥、収穫時期決定の参考となる。
2. 糊熟期は出穂後15日目、黄熟初期は25日目、黄熟後期は35日目に収穫したものである。
3. 諸要因と成分組成の関係(表1)は、2カ年のデータをまとめたものである。
4. 諸要因と茎葉中の諸成分の第一胃内消失率の関係(表2)は、平成16年に生産された材料を用いて、ナイロンバック法により得られた結果である。
5. 葉色値は20株の生育中庸な任意の稲体について第一葉身をSPAD-502(葉緑素計)で測定し、その平均値とβカロテンの関係()について2カ年のデータをまとめたものである。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:飼料イネの特性を活かした地域資源活用型の飼料給与技術の開発
予算区分:国委託(ブランドニッポン3系)
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:関誠、小柳渉、宮腰雄一、和田富広、高橋英太、石崎和彦(新潟作物研)
発表論文等:関ら(2004)草地学会誌 50(別):432-433

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