エゴマから調製した脂肪酸カルシウムの給与は乳中のα-リノレン酸含量を高める


[要約]
α-リノレン酸を多く含むエゴマ油より作られた「エゴマ脂肪酸カルシウム」を搾乳牛に1日1頭あたり350g給与すると、乳量・乳成分に影響を与えることなく、乳脂肪中のα-リノレン酸含量を約1.3倍まで増加させることができる。

[キーワード]乳牛、エゴマ、α-リノレン酸、脂肪酸カルシウム

[担当]福井畜試・家畜研究部・飼養管理研究グループ
[代表連絡先]電話0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 食品に含まれる油脂成分の中で、「n-3系列脂肪酸」が心臓疾患や脳卒中などの生活習慣病およびアレルギーの予防に深く関わることが知られるようになり、消費者の関心を集めている。
 福井県畜産試験場ではn-3系列脂肪酸のひとつであるα-リノレン酸を多く含む「エゴマ」を取り上げ、これまでにα-リノレン酸含量の多い鶏卵や豚肉の生産技術について報告している。今回は、エゴマ油をルーメン内で分解されにくい脂肪酸カルシウムとして乳牛に給与し、α-リノレン酸を多く含む牛乳生産の可能性について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. ホルスタイン種搾乳牛14頭を試験区(7頭)と対照区(7頭)に分け、試験区にはエゴマから調製した脂肪酸カルシウム(エゴマ油74%含有。以下、エゴマ脂肪酸カルシウムと略する)1頭あたり350gを1日2回に分け、配合飼料に添加し給与する。また、給与飼料中の脂肪酸組成が変化した場合にエゴマ脂肪酸カルシウムの給与効果に影響がみられるか検討するため、粗飼料を脂肪酸組成の大きく異なるグラスサイレージからコーンサイレージ(表1)に切り替え、比較する。調査項目は、飼養成績および乳脂肪・血液脂質中の脂肪酸組成等とする。
2. 体重、乳量、乳成分には試験区および対照区で差は認められない(表2)。
3. エゴマ脂肪酸カルシウムを給与すると、乳脂肪中α-リノレン酸およびオレイン酸の比率が有意に高くなり、パルミチン酸の比率は有意に低くなる(表3)。
4. 乳脂肪中のα-リノレン酸の比率は、試験区においてエゴマ脂肪酸カルシウム給与開始後1週目から上昇し、給与終了後1週間で対照区と同程度まで低下する。また、粗飼料の切り替え後も、試験区でα-リノレン酸の比率が高く推移する。エゴマ脂肪酸カルシウムの給与効果は粗飼料中の脂肪酸組成の違いによる影響を受けない(図1)。なお、血液脂質中のα-リノレン酸の比率の推移は、乳脂肪中の推移とよく一致している。
5. エゴマ脂肪酸カルシウム給与中の牛乳200mlあたりのα-リノレン酸含量を試算すると、対照区の25mgに対して試験区では32mgとなり、約1.3倍になる。

[成果の活用面・留意点]
1. α-リノレン酸を多く含む高付加価値牛乳および乳製品の開発に役立つ。
2. 本試験で給与したエゴマ脂肪酸カルシウムは1kgあたり1,400円であり、コスト面での改善が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:エゴマを利用したα-リノレン酸含量の多い牛乳の生産
予算区分:県単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:栗原優佳子、吉田靖、山崎昭治

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