絶食を伴わない誘導換羽法による採卵鶏の卵質向上効果


[要約]
従来の強制換羽に代わる方法として、ふすままたは脱脂米ぬかを主体とした換羽飼料を用いた誘導換羽法は、強制換羽に比べ体重減少率が少なく、ハウユニット、卵殻強度など卵質の改善、飼養期間の延長など強制換羽と同等の効果がある。

[キーワード]卵用鶏、誘導換羽、強制換羽、絶食、ふすま、脱脂米ぬか

[担当]愛知農総試・畜産研究部・家きんグループ
[代表連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 産卵後期の卵質改善及び飼養期間を延長させる方法として強制換羽技術がある。しかし、強制換羽は長期の絶食を伴うため、採卵鶏に対するストレスが大きい。そこで、強制換羽に代わる方法として、ふすままたは脱脂米ぬかを主体とした換羽飼料の給与により絶食を伴なうことなく換羽を誘導する誘導換羽法について検討する。

[成果の内容・特徴]
白色レグホーン種を用い、成鶏飼料を不断給餌し続ける無処理区、従来の強制換羽法により体重が25%減少するまで9日間絶食を行う絶食区、ふすま主体換羽飼料(表1)を14日間給与するふすま区、脱脂米ぬか主体換羽飼料を同様に給与する米ぬか区をそれぞれ30羽×4反復で試験する。各処理は69週齢に行う。
1. 換羽処理直後の換羽飼料摂取量は嗜好性が低く、処理前に比べ摂取量は少なかったが、処理開始後日数を経るにしたがい摂取量は徐々に増えてくる(表2)。
2. 体重がもっとも減少した時点での処理前体重に対する体重減少率は強制換羽の25%減に対し、換羽飼料を用いた誘導換羽法では15〜16%と小さい。また処理期間中の体重はいったん減少した後ふすま区においては横ばいとなり、米ぬか区では増加に転じる(図1)。
3. 誘導換羽処理後の産卵率は換羽飼料にふすまを用いることにより無処理に対し5.4%、米ぬかにより5.7%改善する(図2)。
4. 換羽飼料を用いた誘導換羽法により、誘導換羽処理後の卵白高及びハウユニットは高くなり、卵殻強度は強くなる。卵殻重、卵殻強度は有意差はみられないものの改善する傾向が見られる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 換羽飼料原料にはふすままたは脱脂米ぬか、炭酸カルシウム、食塩、ビタミンミネラルプレミックスを用いているが、これらは一般的に流通している原料であるため、配合にあたっては十分に活用できるものである。
2. 消費者の動物福祉、鶏卵の安全性に対する意識の高まりから、今後、絶食を伴わない誘導換羽法は生産現場への応用が期待される。
3. 強制換羽に較べ、処理終了タイミングにより鶏がへい死する危険が少なく、処理を行いやすい技術である。
4. 誘導換羽は処理中も消化管内に飼料が満たされているため、サルモネラ菌の排菌が少ないと考えられる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:鶏の生理的特性に応じた飼養管理技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2009年度
研究担当者:箕浦正人、大口秀司、伊藤裕和、野田賢治、加藤泰之
発表論文等:箕浦ら(2006)愛知農総試研報 37:135-141

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