温州みかん果皮飼料添加によるβ-クリプトキサンチンを多く含む鶏肉の生産


[要約]
肉用鶏に温州みかん果皮乾燥粉末を2〜4%飼料添加して給与することにより、生産性を維持しながら、β-クリプトキサンチンを2〜5倍(約8.8〜55.4μg/鶏肉100g)含む鶏肉を生産することができる。

[キーワード]肉用鶏、鶏肉、温州みかん果皮、β-クリプトキサンチン

[担当]三重科技セ・畜産研究部・中小家畜グループ
[代表連絡先]電話0598-42-2207
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 β-クリプトキサンチンはβ-カロテンよりはるかに発ガン抑制活性が高く、主に柑橘類に多く含まれている。一方、生産・加工場では、廃棄果実(果皮、搾汁粕)、摘果果実等が大量に処分され、これら廃棄果実等にもβ-クリプトキサンチン等の機能性成分が多量に含まれるが、有効的な利用がなされていない。そこで、生産性を低下せずに、機能性成分を鶏肉に賦与するため、温州みかん果皮を肉用鶏(東紀州地どり)へ給与し、鶏肉へのβ−クリプトキサンチン蓄積効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
 温州みかん果皮(以下、果皮とする)は、60℃通風乾燥し、粉砕後、飼料添加した。(みかん果皮調製コスト:20〜40円/乾物kg)
(参考:温州みかんジュース粕乾燥荒粉砕品200円/12kg(運賃、税別)(他県流通品))
1. 果皮を飼料添加することにより、β-クリプトキサンチンを高濃度に含有する鶏肉を効率的に生産することが可能である。
2. 鶏肉中のβ-クリプトキサンチンは、モモ肉がムネ肉より多く含まれ、ムネ肉の約5倍量含まれる。モモ肉では、53.9〜55.4μg/100g、ムネ肉では8.8〜10.6μg/100g含まれるが、果皮添加量による含有量の差は小さい(図12)。
3. 肝臓中のβ-クリプトキサンチンは、585〜700μg/100g含まれ、最も高濃度に含まれる(図2)。
4. 血中β-クリプトキサンチン濃度は、果皮添加量に比例して増加する(図3)。
5. 飼養成績及び解体歩留は、果皮の飼料添加による悪影響はみられず、逆に果皮添加飼料の嗜好性が良く、飼料消費量が増えるとともに出荷適正日齢時(14週齢)の平均体重も増加する傾向がみられる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 温州みかん果皮は、保存性や飼料給与等の面から、乾燥粉砕する必要がある。
2. β-クリプトキサンチンは、分解しやすいので、配合直前まで遮光密閉保存する方が望ましい。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:熊野古道特産品共同開発事業「地域資源(カンキツ)を活かした特産品の付加価値向上技術の開発(カンキツ成分賦与鶏卵肉の開発)」
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:佐々木健二、巽俊彰、紀平三生、岡秀和、寺田和彦、中西圭一、前川哲男(農業研究部)、市ノ木山浩道(紀南果樹研究室)、須崎徳高(紀南果樹研究室)、三島隆(三重大学)、後藤正和(三重大学)

目次へ戻る