海洋深層水給与による鶏卵の生産


[要約]
産卵鶏に海洋深層水の原水を20倍希釈(5%添加)して与えることにより、産卵性を低下させずに、卵白の凝固性及び気泡性の高い鶏卵を生産できる。

[キーワード]卵用鶏、海洋深層水、希釈、卵白、凝固性、気泡性

[担当]三重科技セ・畜産研究部・中小家畜グループ
[代表連絡先]電話0598-42-2207
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 海洋深層水は、様々な分野で「新資源」として注目を浴びており、その清浄性やミネラルが豊富に含まれている特性を活用した商品が続々と市場に登場している。平成14年度から、三重県でも企業等による海洋深層水の産業利用を促進するため、尾鷲市沿岸で暫定取水を開始し、平成18年度からの本格取水へ向け、産業利用の一層の拡大が望まれており、水産分野以外での新たな利用方法について研究開発が期待されている。そこで、本試験では、原水希釈水をニップル式給水器を用いて産卵鶏に給与し、産卵成績及び卵質等に及ぼす影響を調査する。

[成果の内容・特徴]
 海洋深層水は、尾鷲市三木里沖の深度417mから取水したものを給与まで4℃で保存したものを用い、その主な成分等は、塩分3.4%、カルシウム400mg/L、マグネシウム1300mg/Lである。海洋深層水(原水)の譲渡価格は、300円/t。
1. 飼養成績は、深層水を20倍希釈(5%添加)して与えても、通常と同等の成績を示すが、10倍希釈(10%添加)では、飲水量が明らかに増加し、産卵性が低下する傾向がみられる(表1)。
2. 鶏ふん水分含量は、深層水を多給するほど多くなる(表1)。
3. 卵質は、深層水給与による影響はみられない(表2)。
4. ゆで卵の官能検査(卵白の硬さ)において、深層水を20倍希釈して与えた鶏が生産した鶏卵卵白の硬さは通常の鶏卵より硬く、凝固性が高い(表3)。
5. 加工特性の目安となる卵白の気泡性は、深層水給与により有意に大きくなる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 深層水濃度を高めると産卵性や鶏ふん水分含量に悪影響が生じるので、海洋深層水の原水を20倍以上希釈して与えること。
2. 鶏ふん水分含量がわずかに増加するので、鶏舎内ふん乾燥システムのない鶏舎では夏期の鶏ふん処理対策が必要である。
3. ニップル式給水器以外の給水法では、飲水量が格段に多くなり、水様便となるので制限給水対策が必要となる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:海洋深層水の有効活用に関する研究(採卵鶏における深層水(希釈原水、ニップル式給水器)の給与が産卵性及び卵質等に及ぼす影響)
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:佐々木健二、巽 俊彰、中西圭一、寺田和彦、岡 秀和、紀平三生

目次へ戻る