微生物を活用した食品残さの飼料調製および保存技術の開発


[要約]
食品残さを好気性発酵させた後,ビニールパックに密封して原料由来の乳酸菌で嫌気性発酵させることにより,長期間保存可能な低コスト飼料が製造できる。

[キーワード]豚、食品製造残さ、発酵飼料

[担当]埼玉畜研・生産技術担当
[代表連絡先]電話048-536-0311
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 食品残さの飼料化は、食品リサイクル法の推進、飼料自給率の向上を図る上で極めて重要である。飼料化の方式として、保存性、安全性等が確保できる発酵乾燥処理方式が本県でも普及しつつあるが、乾燥経費が高く、低コスト化が望まれている。そこで、微生物を用いて発酵し、乾燥処理不要で長期間保存可能な低コスト飼料製造・保存技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
 肥育豚用後期飼料として、残飯24%、豆腐粕16%、鰹節だし粕4%、煎餅残さ24%、ふすま24%、戻し発酵飼料8%で調合し、高温好気性細菌とともに撹拌、発酵回転ドラムで75℃2時間加熱する。さらに、熟成箱に移し約20時間熟成し、発酵飼料を製造する。この段階で製造時点とする。
 次いで、製造した発酵飼料を通常の乾燥処理(80℃の温風で1時間乾燥;発酵・乾燥飼料)に代えて、発酵飼料10kgをビニールパックに入れ、空気を吸引後密封(発酵・パック飼料)することにより長期保存が可能となる。本技術には、次のような特徴がある。
1. 2ヶ月保存後の発酵・パック飼料の水分含量は31%と高いが、乾物中の一般成分は市販飼料とほぼ同等である(表1)。
2. 原料中の大腸菌群は、高温好気性発酵処理で殺菌され、発酵・パック飼料では分離されなくなる(表2)。
3. 発酵・パック飼料の保存中のPHは5以下を保持する(表2)とともに、2ヶ月保存後の全窒素に対する揮発性塩基性窒素の割合が低く、酪酸も検出されず良好な発酵品質を保ち、乳酸発酵特有のほのかな芳香を持っている(表3)。
4. 発酵・パック飼料の2ヶ月保存後の過酸化物価は製造時と殆ど変わらず、脂肪の腐敗や変敗は認められない(表3)。
5. 発酵・パック飼料の製造コスト(光熱費)は、発酵・乾燥飼料の約10分の1である(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 簡易な設備で、食品残さから低コストで長期間保存可能な飼料が製造できるため、畜産農家での活用が期待できる。
2. 原料の鮮度や有害物質等が混入しないように留意するとともに、開封後は速やかに給与する必要がある。
3. 給与方法・技術等については、開封後の取り扱いを含め、さらに実用性を高めることが課題である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:発酵飼料製造方法の開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2002年度
研究担当者:中村嘉之、山井英喜、西塚 栄((株)新明和工業)、高木洋祐((株)新明和工業)
発表論文等:中村ら(2005)埼玉農総研研報4:101-104

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