豚AI用子宮角深部注入カテーテルを用いた豚胚の非外科的移植


[要約]
改良したフレキシブル子宮角深部内人工授精用カテーテルを豚胚の非外科的移植に用いると、良好な受胎率、産子数、生産率(産子数/移植胚数)が得られる。

[キーワード]豚胚、非外科的胚移植、子宮角深部注入用カテーテル

[担当]千葉畜総研・生産技術部・生物工学研究室
[代表連絡先]電話043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 豚胚移植技術は、優良種豚の有効利用、SPF豚の作出利用、優良遺伝子の保存、クローンあるいはトランスジェニック豚作出等の基礎的技術に貢献すると考えられる。今まで豚胚の移植は、外科的に移植する方法が主に実施され、非外科的移植での受胎率や産子数は満足する成績でなかった。最近、Martinezらは子宮角深部への人工授精(AI)用フレキシブルカテーテルを胚の非外科的移植に応用し、高い受胎率と産子数を報告した。
 そこで、野外でも利用できる実用的な非外科移植法の開発を目的として、市販のAI用子宮角深部注入用カテーテルを改良し、有効な移植法を検討した。

[成果の内容・特徴]
1. 移植時の姿勢について、ストールの床にコンクリートパネルを敷き受胚豚の後肢を12cm上げ、鉄パイプおよび平打縄で保定し、カテーテル先端が子宮角内へ挿入し易い姿勢を保った(図1)。
2. 移植用カテーテルについて、ガイドカテーテルを豚の外陰部より挿入して子宮頸管部に固定し、次にFIRFLEX(FFX;スペインMagapor社製全長150cm、外径4mm、内径1.5mm)を頸管の先の子宮角内に挿入した。次に三方活栓でFFX末端と1ml注射器(一頭当たり13~30個の胚が含む1mlのTALP-Hepes液)および5ml注射器(胚注入用5mlのTALP-Hepes液)を連結し、交互に速やかに注入した(写真1)。
3. FFX射出口の改良について、先端部の射出口に子宮角内の粘液等が詰まり、胚が全個数排出されず、内部にその一部が残存するケースが認められた。そこで、射出口を樹脂で塞ぎ、側壁にドリルで新たに穴を開け、従来の一穴から二穴にした(写真2)。
4. 移植胚は、人工流産処置で発情周期を同期化した供胚豚14頭からAI後5.5〜6.5日目に採取された新鮮胚124個および1日培養胚25個を供した。受胚豚は、未経産および初産で供胚豚との発情日差が±0〜-2日の6例に移植した(表1)。
5. 移植成績は、FFX挿入長が38cm以上を示し、カテーテルが上子宮角深部に到達したと思われる5例の移植中4例が分娩し、25頭(平均6.25頭)の産子が得られた。
産子には、臨床的な異常は認められず、妊娠期間および産子の生時体重は、いずれも標準的な値であった(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 新鮮胚を移植する場合、供胚豚と受胚豚の発情周期の同期化が必要となる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:実用的な豚胚移植技術の検討
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:中根崇、小野寺道寛、坂元克弥、山口倫子、高橋圭二、神山佳三

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