食品残さ発酵液状飼料給与は豚肉質に影響がなく、豚房内のアンモニア発生量が減少


[要約]
人工気象室内の夏条件下で、食品残さを乳酸発酵させて調製した液状飼料(以下「発酵リキッド飼料」)を肥育豚(WL)に給与したところ、発酵リキッド飼料の方が対照飼料に比べ1日当たりの増体重が少ないが、乾物当たりの飼料要求率はほぼ同等であり、肉質に対しての影響はない。また、豚房内のアンモニア発生量も通常の配合飼料給与時より少ない。

[キーワード]豚、食品残さ、発酵リキッド飼料、肉質、アンモニア

[担当]神奈川畜技セ・畜産工学部
[代表連絡先]電話046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 液状の食品残さを乳酸発酵させて飼料とする発酵リキッド法は、液状飼料を好んで食べる豚の習性からも水分の多い食品残さ利用に有効な方法である。本研究では、発酵リキッド飼料を供試豚へ給与した場合の発育性、肉質、豚房内アンモニア濃度について検討する。

[成果の内容・特徴]
 W×L交雑種を4頭ずつ2区に分け、人工的に温度設定できる人工気象室を用いて、温度を夏期条件(22℃〜31℃)に設定し、通常飼料を給与して1週間馴致した後、試験区に発酵リキッド飼料、対照区に低蛋白質飼料を給与し、下記のとおり調査を行った。
1. 発酵リキッド飼料(6ロット)のpHは平均3.73±0.07である。水分は発酵リキッド飼料は79.3%、低蛋白質飼料は12.0%である。発酵リキッド飼料の乾物中の成分は低蛋白質飼料と比較して、粗蛋白質(発酵リキッド飼料19.3乾物%>低蛋白質飼料13.1乾物%以下同様)、粗脂肪(9.3>3.5)、粗灰分(7.6>4.7)が多く、粗繊維(0.8<4.0)が少ない。
2. 1日当たりの増体重は発酵リキッド飼料区の方が低い傾向にある。乾物当たりの飼料摂取量は発酵リキッド飼料区の方が低い傾向にあるが、乾物当たりの飼料要求率は発酵リキッド飼料区と低蛋白質飼料区でほぼ同等の結果となり、摂取量が増体に影響を及ぼしていると思われる(表1)。
3. 枝肉検査については両区に差が認められない(表2)。
4. 肉質検査については両区に差が認められない(表3)。
5. 試験期間の豚房内アンモニア濃度は(発酵リキッド飼料区13ppm、低蛋白質飼料区11ppm)、通常飼料給与期間(発酵リキッド飼料区25ppm、低蛋白質飼料区17ppm)と比較すると両区とも試験期間が有意に低い(P<0.05)。
6. 飼料利用コストを試算すると試験区33.8円/乾物kg<対照区37.5円/乾物kg<配合飼料38.6円/乾物kgとなる。

[成果の活用面・留意点]
1. 食品残さを利用した発酵リキッド飼料は、より低コストで低蛋白質飼料と同等の肉質を有する豚肉生産に活用できる。
2. 発育が遅れる傾向があるので、給与の際には給与回数を増やす等、摂取量を増やすための工夫が必要である。
3. 発酵リキッド飼料の給与により、豚房内のアンモニア臭気発生の問題は少ないと考られるが、飼料そのものから発生する臭気に対する配慮が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:食品残さ飼料給与豚の肉質改善に関する試験
予算区分:県単
研究期間:2004年度
研究担当者:前田高弘、平原敏史、小嶋信雄
発表論文等: 前田ら(2004)平成16年度試験研究成績書(繁殖工学・養豚):21-23
前田ら(2004)平成16年度試験研究成績書(繁殖工学・養豚):24-26

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