高い発育を示す豚に対してもアミノ酸添加は窒素排出量の低減に有効


[要約]
一日平均増体量が1,000gを越える高い発育を示す豚でも、低蛋白質飼料に不足する制限アミノ酸を添加することにより、発育が低下することなく、一般的に流通する蛋白質含量の高い飼料と比較して約30%窒素排出量を低減できる。

[キーワード]ブタ、窒素、低蛋白質飼料、制限アミノ酸、発育

[担当]富山畜試・養豚課
[代表連絡先]電話076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 環境への負荷を低減するため、肥育豚飼料中の蛋白質含量を下げるとふん尿への窒素排出量を低減することができる。一方、低蛋白質飼料を一日平均増体量が1,000gを越えるような高い発育を示す豚に給与した場合、発育の低下や蛋白質の不足を補うためにエネルギーを過剰摂取することにより過度の脂肪蓄積が懸念される。
 そこで、高い発育を示す豚を対象に低蛋白質飼料への制限アミノ酸の添加による窒素排出量の低減効果並びに、豚の発育に与える影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 低蛋白質飼料を給与した場合、高蛋白質飼料を給与した豚と比較して一日平均増体量が低下するのに対し、低蛋白質飼料に制限アミノ酸を添加した飼料を給与した豚の一日平均増体量は1,000gを越える良好な発育を示し、高蛋白質飼料を給与した場合とほぼ同等である(表1)。
2. 肥育終了時の背脂肪の厚さ(体長1/2部位)は、低蛋白質飼料に制限アミノ酸を添加した豚と高蛋白質飼料を給与した豚との間に差はなく、肥育期間中の背脂肪の増加量も差がない(表1)。
3. 低蛋白質飼料に制限アミノ酸を添加した飼料を給与した豚での一日あたりの窒素排出量は、低蛋白質飼料のみを給与した場合とほぼ同等となり、高蛋白質飼料を給与した豚と比較して、ふんと尿を合わせた窒素排出量が肥育前期で約25%、肥育後期で約40%低減される(図12)。

[成果の活用面・留意点]
1. 高い発育を示す豚においても、低蛋白質飼料に不足するリジン等の制限アミノ酸を単体アミノ酸の形で添加することで窒素の排出量を減らすことが可能となり、環境に配慮した養豚経営が実現できる。
2. 制限アミノ酸の添加に当たっては日本飼養標準に示される豚の要求量を充足するように配慮する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:環境に負荷を与えない高発育能力豚に対応した飼養管理技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:水上暁美、小嶋裕子、水木亮史、新山栄一、廣瀬富雄

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