シバ苗移植による放牧地のシバ草地化


[要約]
利用率が低下し雑草化した放牧地において、在来シバポット苗を1苗/4m2の密度で6月に移植すれば、放牧を継続しながら4年後にはシバ被度67〜85%のシバ草地が出来上がる。

[キーワード]シバ草地、山間傾斜地、シバポット移植法

[担当]茨城肉牛研・飼養技術研究室
[代表連絡先]電話0295-52-3167
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 茨城県内公共牧場の多くは繁殖和牛飼養頭数の減少に伴い利用率が低下し、雑草化が進行している。このような傾向は特に傾斜草地で著しくこれらの草地更新には多大な労力が必要である。このため利用率が低下した放牧地をシバ草地化することで公共牧場の管理労力の軽減が可能である。
 雑草化した傾斜放牧地にポット移植法によりシバを導入し、放牧を継続しながらシバ草地を造成するための技術を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 利用率が低下し雑草化した放牧地において、「朝駆」(畜草研品種登録)、在来シバ1(採取場所:茨城県城里町)、在来シバ2(採取場所:茨城県常陸大宮市)のポット苗(育苗期間60日)を1苗/4m2の密度で6月に移植した後、肉用繁殖牛を定置放牧する。(ポット苗は市販の園芸用セルトレイ:128穴を使用:高知県畜産試験場他によるシバ草地造成マニュアル参考)
2. 放牧2年目までは牧区を2分割し1ha当たり3頭区と5頭区に分けて放牧し、その後は1ha当たり3頭を毎年6月上旬から10月下旬まで定置放牧する。(面積130a)
3. 移植1年目のシバの定着率は各品種とも40%以下と低い。また、シバの定着率は1ha当たり放牧頭数3頭区が5頭区より高い。(表1
4. 在来シバの被度は移植3年目に43〜73%、移植4年目には67〜85%まで高まる。(表2
5. シバを移植した放牧草地の生産量に大きな変動は見られず(表3)、供試した繁殖牛の体重はほぼ維持される。(表4

[成果の活用面・留意点]
1. 雑草化した傾斜放牧地を利用しながらシバ草地化するときに活用できる。
2. 地域在来のシバを利用すれば同じような効果が期待できる。
3. 早期にシバ草地化を図る場合は移植密度を高める。
4. シバ移植後の放牧頭数は1ha当たり3頭程度とする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:山間傾斜地におけるシバ草地造成技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:合原義人、茨田潔、高橋覚志、谷島直樹、小野圭司、矢口勝美
発表論文等:合原ら(2004)茨城畜セ研報 37:165-182

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