ニホンジカはマメ科牧草への食害が大きい


[要約]
混播永年草地のニホンジカの食害の大きい1番草において、特にマメ科牧草(シロクローバー、アルファルファ)の被害が大きく、さらに被害程度が大きくなるほどマメ科牧草の減収率が高くなる。

[キーワード]野生動物、ニホンジカ、食害、混播永年草地

[担当]長野畜試・飼料環境部、長野県林業総合センター
[代表連絡先]電話0263-52-1188、0263-52-0600、
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 近年、牧草地においてニホンジカによる食害が増加し、長野県においても山沿いの採草地を中心に多くの被害が報告されているが、被害状況の詳細については明らかにされていない。そこで、長野県畜産試験場内のニホンジカ侵入圃場において、圃場の環境および草種別の被害状況を調査し、食害の特徴を明らかにして、防御技術の確立のための基礎資料として活用する。

[成果の内容・特徴]
1. ニホンジカの牧草地における食害の分布は、圃場の中央部(No.5)および林縁部(No.7,8)で高く、人の出入り口付近(No.1)や道路沿い(No.2,3,6)において低くなる。ニホンジカは外敵(危険)から逃げやすい中心部や、人間の影響が少なくすぐに逃げ込める林縁部で多く採食している(図1)。
2. ニホンジカの混播草地における草種別の食害状況は、1番草の特にマメ科牧草(シロクローバー、アルファルファ)において収量が30%近くまで低下するなど、マメ科牧草に対する被害が顕著に大きい(表1)。
3. 1番草の食害の大きい場所の特徴として、現存量(被害程度大;220kg/10a>被害程度中;201kg/10a>被害程度小;119kg/10a)の多いところの被害が大きい。さらに、被害が大きくなるほど合計収量の減少率(被害程度小;13%<被害程度中;40%<被害程度大;65%)よりマメ科牧草の減少率(被害程度中;58%<被害程度小;64%<被害程度大;81%)が高くなる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ニホンジカの食害を受けやすい草種や時期、場所が把握でき、食害対策のための情報源として活用できる。
2. 長野県高ボッチ高原(標高1600m)から続く標高800mの丘陵地帯にある圃場を対象にした2年間の調査結果である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:牧草・飼料作物生産実証試験
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:百瀬義男、中山利明、水流正裕、渡辺晴彦、岡田充弘、小山泰弘、山内仁人(長野林業総合センター)

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