廃棄乳の酸凝固による環境負荷物質の除去及び除去物の堆肥化処理


[要約]
廃棄乳に食酢を添加することにより、乳中に含まれる環境負荷物質の大半を固形化し除去できるため、浄化槽への負荷を軽減できる。除去した固形物は牛ふんと混合して堆肥化することで処理でき、堆肥の品質にも影響を及ぼさない。

[キーワード]乳用牛、廃棄乳、酸凝固、カード、ホエイ、浄化槽、堆肥

[担当]愛知農総試・畜産研究部・畜産環境グループ
[代表連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 酪農経営規模の拡大等に伴い、廃棄乳量が増大している。廃棄乳はBODが100,000mg/L以上あり、非常に負荷が高いため、浄化槽への投入量が増加することで浄化槽の処理能力を超えることが多い。そこで廃棄乳中の環境負荷物質を固形化し、別途処理することで浄化槽への負荷を軽減する。

[成果の内容・特徴]
1. 搾乳直後または40℃程度に加温した廃棄乳に食酢等を添加してpHを4.6以下にし、酸凝固によりカード(固形物)とホエイ(液体)に分離する。これを2mm程度のメッシュを通過させることでカードを回収できる。
2. 酸凝固後のカードの除去により、廃棄乳に含まれるBOD、COD、全窒素、全リンの一部を除去できる。特にBODは67.5%、全窒素は78.4%を除去することが可能であり、液体成分の負荷量を大きく低減できる(表1)。
3. カードの処理は、牛ふんとの混合による堆肥化が有効である。牛ふんとカードを混合した堆肥は、カード単独で堆肥化するよりも発酵温度が高く、55℃以上の持続時間も長くなる(表2)。コマツナの発芽率についても、カード単独よりも、牛ふんと混合したほうが、速やかに発芽率が改善される(図1)。また、カードに多く含まれる粗脂肪についても、牛ふんとの混合により速やかに分解が進む(図2)。
4. 堆肥化終了後の各試験区の堆肥のコマツナを用いた幼植物試験では、生育障害等は確認されない。

[成果の活用面・留意点]
1. 廃棄乳を浄化槽で処理する場合の浄化槽への負荷を軽減できる。
2. カードを堆肥化する際、カードの混合割合が高くなるとアンモニア等の臭気が発生する可能性がある。さらに、カードは通気し難いため、切り返しの回数や、通気量を考慮する必要がある。
3. 浄化槽処理時の食酢等の混入によるpHの影響等を調査する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:酪農雑排水、廃棄乳の簡易処理技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:鈴木良地、榊原幹男、増田達明、中谷洋、平山鉄夫
発表論文等:鈴木ら(2006)愛知農総試研報 37:147-154

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