鶏ふんを利用したブドウ、モモせん定枝の堆肥化技術


[要約]
ブドウ、モモ園で生じるせん定枝をチッパーで粉砕後、鶏ふんを添加し腐熟期間中に3回切り返し作業を行えば、せん定終了から基肥施用の間の6〜8ヶ月間で完熟堆肥が生産され、環境に配慮したリサイクル農業が可能となる。

[キーワード]せん定枝、堆肥化、リサイクル、鶏ふん、果樹

[担当]山梨果樹試・環境部・生理加工科
[代表連絡先]電話0553-22-1921
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 現在、ブドウやモモ園で生じるせん定枝の大半は焼却処分されているが、未利用有機物の有効活用や大気汚染防止の観点から、堆肥として果樹園にリサイクルする技術が求められている。そこでブドウとモモのせん定枝を原料として、室内および屋外条件で主に窒素肥効と分解程度を検討し、優良堆肥を効率的に生産する方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. モモ園に堆肥として施用する有機物はC/N比が低い資材では窒素が効きやすくモモ樹の生育が良好であり、高い資材は生育が劣る(図1)。C/N比は有機物に含まれる窒素成分の効きやすさの判断指標となる。
2. せん定枝の良質な堆肥化を図る添加資材としては、鶏ふんがせん定枝の分解を促進し、最もC/N比が低くなる(表1)。添加する鶏ふん量が多いと堆肥の窒素肥料としての効果が大きく、少ないと腐熟が十分でないので開始時のC/N比は30程度に設定する。
3. C/N比13以下の堆肥でコマツナの窒素吸収量が良好となり、この範囲が生育抑制のない腐熟度の進んだ範囲と判断された(表1)。
4. 堆肥化期間中に3回切り返し作業を行うと腐熟化が進んで体積は約4割に減少し、完熟堆肥を生産できる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ブドウ、モモの成園のせん定枝量は10a当たり250〜350kg(チップ化後容積約1000L)である。堆肥開始時にC/N比を30に設定するためには30〜40kg、太枝の多い場合は50kgの鶏ふんが必要である。
2. この方法で10a分のせん定枝を堆肥化した場合、窒素1kg、リン酸3kg、カリ2.5kg程度の肥料効果が見込まれる。
3. せん定枝の裁断が粗いと腐熟が進みにくいので、専用チッパー等を用いて長さ2〜3cm以下の細片になるように粉砕する。
4. 堆肥化期間中はコガネムシ、カブトムシ等が入りやすいのでビニール被覆を行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:各種土壌改良材等の効果確認
予算区分:県単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:古屋 栄、手塚誉裕、丹沢 隆

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