強せん定はモモ若木の枯死障害の要因となる


[要約]
モモ若木の枯死障害の発生は、冬季の強せん定が要因の一つである。大きなせん定切り口からの枯れ込みが養水分の通導を妨げ、枯死に至ると考えられる。また、主幹部と主枝の切り口の総面積が主幹部断面積を超えると障害の発生が多くなる。

[キーワード]モモ、枯死、若木、強せん定

[担当]山梨果樹試・栽培部・落葉果樹栽培科
[代表連絡先]電話0553-22-1921
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、モモの若木が枯死する障害が県下全域で発生しており、その発生原因の究明と対策が求められている。そこで、現地調査により実態を把握するとともに、その結果から障害に関与すると思われる要因を組み入れて再現試験を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 現地調査では、障害発生樹は冬季せん定の程度が強い傾向が見られる(図1)。障害発生園の前作や地表面管理、栽培品種等と障害発生には一定の傾向は見られない(データ省略)。
2. 障害は開花から展葉期に確認でき、障害樹の多くは主幹部に縦の亀裂が入り、亀裂からヤニの発生が見られるとともに、ヒコバエの発生が観察される。また枯死樹の解体調査をすると、せん定切り口から主幹部まで達する深い枯れ込みが入っている(図2)。
3. せん定程度を変えた再現試験では、枯死障害は強せん定樹でのみ発生し、衰弱もしくは枯死した樹の特徴は現地調査と同様である(表1)。大きな切り口への癒合剤塗布による障害軽減効果は期待できない。
4. 主幹部と主枝の切り口の総面積が地際から10cmの主幹部断面積を超えると障害の発生が多くなる(図3)。これは主幹部におけるせん定部位からの枯れ込みが、養水分の通導を妨げるためであると思われる。

[成果の活用面・留意点]
1. 4年生までの若木で発生が多いので、強せん定とならないよう、若木のうちから生育期の摘心・捻枝などの新梢管理を徹底する。
2. 軟弱徒長生育(ブドウ園からの改植園で多い)や排水不良園での滞水は障害の発生を助長するので注意する。
3. 樹液流動後のせん定処理は切り口からの枯れ込みが少なく障害の発生も軽減される(データ省略)ので、太枝の処理は樹液流動後に行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:モモ枯死障害の原因究明と対策
予算区分:県単
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:新谷勝広、猪股雅人、富田 晃、渡辺晃樹

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